目次
はじめに
インフルエンザワクチンは発症予防効果と重症予防効果があり、多くの人がうってきたと思います。しかし、注射が苦手な子供も多くいる中で日本にもフルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)という救世主が現れました。
フルミスト(経鼻インフルエンザワクチン)は3価ワクチンで2歳以上19歳未満の人に対して、鼻の粘膜にかけるだけで効果が1年間持続します。注射だと2〜4週間で抗体がでてきて2〜3ヶ月でピーク。その後徐々に効果が減ってきますが予防効果は計5ヶ月程効果が続きます。また、経鼻弱毒化生ワクチンと不活化ワクチンの直接比較した日本での研究はありませんが予防効果は同等といわれています。
今回、子供たちがフルミストをしたので体験談と受験生のワクチン選択について書きたいと思います。
経鼻インフルエンザワクチンの効果のエビデンス
日本で経鼻弱毒化生ワクチンと不活化注射ワクチンの直接比較をした研究はありませんが、日本小児科学会と厚生労働省は経鼻弱毒生ワクチンと注射ワクチンでインフルエンザの予防効果について明確な差は確認されていないと報告しています。
2024年10月に発表された多くの研究を分析したエビデンスの高い論文では経鼻弱毒生ワクチンと注射ワクチンの比較を行っています。
結果としては、4 価生弱毒化鼻腔内ワクチンと 3 価不活化筋肉注射ワクチン、 3 価生弱毒化鼻腔内ワクチンと不活化筋肉内ワクチンの間に有意な差はなし。大規模な多施設試験のサブグループ解析では、3 価生弱毒化鼻腔内インフルエンザワクチンが、3 価不活化筋肉注射インフルエンザワクチンよりも優れていたとのことです。
引用:Garai R, et al. Head-to-head comparison of influenza vaccines in children: a systematic review and meta-analysis. J Transl Med. 2024 Oct 4;22(1):903. doi: 10.1186/s12967-024-05676-9.
上記は海外のデータなので日本人の効果について厳密に示したものではありません。日本人の研究がでてくるとどちらの方が有用かより詳しくわかるかもしれませんね。
フルミストの注意点
注射と異なる点をあげます。
・基本生ワクチン接種と4週間あける。
・ゼラチン、卵アレルギーは注意
・重度の喘息も注意
・ウイルスを排出して他の人への感染の可能性のため、1〜2週間免疫不全や乳児、妊婦へ接触、妊娠を避ける
・妊婦、免疫不全者、中枢神経のバリアが壊れている人はダメ
・アスピリン、ジクロフェナクナトリウムは飲まない
もちろん、明らかな発熱や重篤な急性疾患、ワクチンでアレルギーが出た人は摂取不適です
フルミストの副反応
添付文書に書いてある投与したあとに起きる可能性のある反応です。
10%以上: 鼻閉・鼻漏(59.2%)、咳嗽、口腔咽頭痛
1〜10%未満: 鼻咽頭炎、食欲減退、下痢、腹痛、発熱、活動性低下・疲労・無力症、筋肉痛、インフルエンザ様症状(接種後数日でインフルエンザと診断されることあり)
1%未満: 発疹、鼻出血、胃腸炎、中耳炎頻度不明: 顔面浮腫、蕁麻疹、ミトコンドリア脳筋症の症状悪化
子供たちのフルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)体験
私達の子供は11歳、9歳、9歳、4歳、2歳。毎年子供達は嫌々注射してました。小さい子は泣き叫んでます。
そんな子供達に今年はフルミストを行いました。
4歳はやらないとゴネていたので、11歳と9歳と先にフルミストを接種。
子供達は「全然大丈夫、めっちゃ楽〜」と話してました。
次に2歳。わけ分からず、ずっと笑顔のまま終了。
最後に4歳。歳下がやったので我慢してフルミストしましたが、めちゃくちゃ余裕でゴネてたことを少し恥ずかしそうにしてました🤭
和気あいあいとフルミストの接種は終わりましたが、2日後。
11歳が発熱してインフルエンザ様症状。1日で解熱して次の日クリニックにいって検査するのもインフルコロナ陰性。学校と塾は休みました。副反応だったのでしょうか。
9歳は症状なし。
4歳と2歳は鼻水と咳少々。
人によるとは思いますが、副反応はあります🙁
受験生のインフルエンザ予防接種案
インフルエンザワクチンをうったら必ず発症しないわけではありません。基本的な感染予防や適切な睡眠や食事などをして免疫を高める必要があります。
フルミストが初めてならどんな副作用が出るかわからないので前年に一度試しておきたいですね。
また、受験するときに発症予防効果がきれてたら嫌ですよね。10月にうつと5ヶ月効果が続くので2月まで効果は続くはずですが、予防効果は3~4か月ごろより徐々に落ちてきます。12歳以下は基本2回注射接種、13歳以上では注射ワクチンは基本1回ですが、2回接種により予防効果期間が長くなる可能性があります。以下はインフルエンザワクチンの選択例です。
小学校受験
秋に行われることが多いのでインフルエンザの流行している時期ではありませんが、12月や1月など遅めの日程であれば注意が必要です。経鼻インフルエンザワクチンは小児の発症予防効果が高いといわれますので基礎疾患がなければフルミスト(経鼻インフルエンザワクチン)はありかなと思います。注射が大丈夫だったりリスクあれば注射2回接種になります。
中学受験
中学受験は1月〜2月に行われることが多いですので流行時期です。インフルエンザワクチンは接種した方がいいと思います。注射のインフルエンザワクチン2回接種、基礎疾患がなければフルミスト(経鼻インフルエンザワクチン)どちらもありかなと思います。
高校受験・大学受験
インフルエンザに触れてきている世代は1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとの報告がありますが、高校や大学だと3月まで試験があり、受験終盤に予防効果が減弱する可能性がありますので2回接種も選択肢になると思います。3月に試験がある人や注射が嫌な人は基礎疾患がなけれフルミスト(経鼻インフルエンザワクチン)も選択肢になると思われます。
まとめ
フルミストは子供がごねないのでとても楽です。でも私の子供は副反応が強くでましたし、副反応や注意点に注意する必要があります。フルミスト、注射によるインフルエンザワクチンどちらも有効ですので、年齢・注射の好き嫌い・受験の時期により適切なものを選びましょう。また、インフルエンザワクチンをうったら必ず発症しないわけではありません。基本的な感染予防、適切な温度湿度を保ち、適切な睡眠や食事などをして免疫を高める必要があります。
書いた人
石井優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
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