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亜鉛が足りないとどうなる?亜鉛の多い食材は?診療指針2024(最新ガイドライン)ふまえて

はじめに

亜鉛(あえん)は私たちの体にとって欠かせない「微量元素」です。わずかな量でありながら、免疫機能を保ったり、味を感じたり、肌や髪を健康に保ったりと、全身のさまざまな働きに関係しています。しかし、実際にはこの亜鉛が不足している人は少なくなく、国民の10~30%が潜在亜鉛欠乏と予想されています。亜鉛の欠乏は心筋梗塞・新型コロナ感染症・骨粗しょう症・骨粗しょう症・味覚障害・妊娠中のけいれんなどのリスクであることがわかっています。その影響に気づかないまま体調不良や不調を抱えている方も多いのが現状です。

2024年には日本臨床栄養学会が「亜鉛欠乏症の診療指針2024」を発表し、亜鉛欠乏の診断や治療に関する基準が定められています。本記事では、亜鉛欠乏症の症状・原因・治療法などを解説します。


そもそも亜鉛とは?

私たちの体には、健康を保つために「微量元素」と呼ばれる栄養素が必要です。亜鉛はそのひとつで、身体の中ではごくわずか(約2g)しか存在しませんが、実はとても大切な働きをしています。亜鉛は体内の約300種類以上の酵素の働きに関係し、次のような重要な役割を果たしています。

  • 免疫の働きを保つ(風邪や感染症への抵抗力)
  • 味覚や嗅覚を正常に保つ(味がしなくなる原因にも)
  • 皮膚の代謝(肌荒れ、傷の治りに関係)
  • タンパク質合成
  • 成長や発育
  • 生殖機能
  • 精神・行動への影響

亜鉛の適正量は?不足するとどうなるの?

亜鉛の適正摂取量

亜鉛は胃からは吸収されず、十二指腸と十二指腸に近い小腸から吸収されます。

亜鉛は成人男性で9~9.5mg/日、成人男性で7~8mg/日が推奨摂取量です。妊婦では+2mg/日、授乳中では+3mg/日となります。

亜鉛不足の症状

亜鉛が不足すると、次のような不調が現れることがあります。

  • 味覚障害(味がわからなくなる、金属っぽい味がする)
  • 皮膚のトラブル(湿疹、ただれ、かゆみ)
  • 脱毛・抜け毛が増える
  • 口内炎や舌の炎症が治りにくい
  • 食欲不振
  • 風邪をひきやすくなる
  • 傷が治りにくくなる
  • 情緒不安定
  • 貧血、骨粗しょう症
  • 発育障害
  • 性機能の低下

なぜ亜鉛が不足するの?

以下のような人は、亜鉛が不足しやすいとされています。

1. 食事からの摂取不足

  • 加工食品や偏った食生活(インスタント、ファストフード中心)
  • ベジタリアン・ビーガンの方(植物性食品は吸収効率が低い)
  • 高齢者

2. 吸収されにくくなる

消化管の手術後

  • 腸の病気(炎症性腸疾患など)

3. 必要量の増加

  • 妊娠・授乳中
  • 成長期(特に思春期)

4. 薬の影響

利尿薬、降圧薬、抗血栓薬、甲状腺ホルモン薬、制酸薬、鉄剤、カルシウム剤、抗不安薬などは亜鉛の吸収を妨げたり、排泄を増やしたりします


どうやって診断されるの?

2024年の診療指針では、以下の4つを基に「亜鉛欠乏症」と診断されます。

  1. 症状がある(皮膚トラブル、味覚障害、脱毛など)
  2. 亜鉛不足の原因がある(食事内容、持病、薬の影響など)
  3. 血清亜鉛値が低い
    • 60μg/dL未満:亜鉛欠乏
    • 60〜80μg/dL:潜在的欠乏の可能性
  4. 亜鉛補充により症状が改善する

1.2.4を満たし亜鉛が60μg/dL未満では亜鉛欠乏症、60〜80μg/dでは潜在的亜鉛欠乏症と診断されます。が1.2.3を満たすものが治療の適応になります。


どのように治療するの?

亜鉛欠乏症では50~150mgを経口摂取することが基本になります。

① 食事の見直し

まずは日々の食事から、亜鉛をしっかり摂ることを意識しましょう。

亜鉛が多い食品

  • 牡蠣(14.0mg/100g)
  • パルメザンチーズ(7.3mg/100g)
  • 煮干し(7.2mg/100g)
  • 抹茶(6.3mg/100g)
  • 豚レバー(6.1mg/100g)
  • 赤身牛肉(5.7.mg/100g)
  • カシューナッツ(5.4mg/100g)
  • 生卵(3.6mg/100g)
  • プロセスチーズ(3.2mg/100g)

亜鉛の吸収を妨げる食品

亜鉛は玄米や全粒粉、大豆などに植物由来の製品に含まれるフィチン酸は鉛の吸収を阻害してしまいますので注意が必要です。玄米も大豆も体によい食物ですので、摂取を避ける必要はありません。カルシウムやオレンジジュース、コーヒーも吸収を妨げます。過剰な摂取は控えて、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

② 薬による治療(亜鉛製剤)

症状がある場合や、血液検査で明らかな欠乏があるときは、医師の判断で亜鉛製剤(酢酸亜鉛、ヒスチジン亜鉛)が処方されます。症状がある人が薬物治療の基本になりますが、今回の診療指針では、慢性肝疾患・糖尿病・炎症性腸疾患・腎不全の人は症状がなくても亜鉛を補充してもいいと示されています。

治療中の注意点

  • 吐き気、腹痛、下痢などの副作用が出ることがあります。
  • 長期間にわたって多量に摂ると「銅欠乏」など別の問題が起きることもあるため、必ず医師の指示のもとで服用しましょう。
  • 治療中は、定期的な血液検査が必要です(1~2か月、銅も考慮)。

過剰摂取はどんな影響がある?

過剰な摂取は銅吸収障害により、鉄の吸収が阻害され貧血や胃の不快感などをおこします。他には吐き気やめまい、同欠乏の症状として神経障害、免疫低下などが生じます。サプリメントなどで過剰な摂取はやめましょう。


まとめ

亜鉛は体に必要な微量元素です。欠乏により多彩な症状が出現しますので、亜鉛を含んだバランスの良い食事摂取が有用です。亜鉛欠乏の診断は採血で可能ですので、亜鉛欠乏かもしれないと思ったらご相談ください。過剰摂取は体に悪影響になりますので、サプリメントを長期にとっている方も一度採血をしておいた方がよさそうです。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士

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