目次
はじめに
高尿酸血症(尿酸値が高い状態)は、検診で指摘されて受診される方が多い疾患です。40歳以降の男性で急増します。現在、日本における高尿酸血症の患者数は推計で1,000万人以上にものぼると言われており、高尿酸血症に併発する痛風は40歳以降で急増し、60~70歳代で最も多くなります。
高尿酸血症は症状がないため、放っておいている方もいると思います。しかし、内科医の視点からお伝えすると、高尿酸血症は、単に足の指が痛くなるだけの病気ではありません。放っておくと腎臓を傷めたり、血管にダメージを与えて心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めたりします。
今回は、最新の医学的知見に基づき、尿酸値を下げるための食事や生活習慣について、具体的かつ実践的な方法を解説します。
高尿酸血症とは?
尿酸は、プリン体が分解された代謝産物です。プリン体は体内のDNAやRNAの生成やエネルギーを作るための物質です。
健康な状態であれば、体内で作られる尿酸の量と、尿や便として体の外に出される量のバランスがうまく保たれています。しかし、何らかの理由で尿酸が作られすぎたり、うまく排出できなくなったりすると、血液中の尿酸の濃度が高くなってしまいます。
日本の基準では、血液検査で尿酸値が 7.0mg/dL を超えると「高尿酸血症」と診断されます。
尿酸が高いとどうなる?
血液に溶けきれなくなった尿酸は、鋭い針のような「結晶」になって関節にたまります。これが炎症を起こすと、「痛風」になります。
しかし、本当に怖いのは痛みがないときです。尿酸の結晶は関節だけでなく、腎臓にもたまります。すると腎臓の機能が低下したり、結石ができる人もいます。また、尿酸値が高い人は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高いことが知られており、高血圧や糖尿病、脂質異常症(コレステロールなどの異常)を併発していることが多く、これらが重なることで動脈硬化を加速させてしまいます。
尿酸値が上がる本当の原因
「尿酸が高いのは、贅沢な食事のせいだ」と言われていた時代もありましたが、実はそれだけではありません。
尿酸値が上がる要因は、大きく分けて3つあります。
産生過剰: プリン体の多い食事の摂りすぎ、激しい運動、肥満
排出低下: 腎臓の機能低下、体質の遺伝
その両方: アルコールの飲みすぎ、メタボリックシンドローム
意外に知られていないのが、体内のプリン体の約7〜8割は「自分の体の中で作られている」ということです。食事から入ってくるのは残りの2〜3割に過ぎません。だからといって「食事に気をつけても意味がない」というわけではありませんが、「ビールを止めるだけ」では不十分な場合も多いのです。
尿酸値を下げるために知っておく食材
尿酸値が高いと指摘された際、最も大切なのは日々の食生活です。バランスよく食べることが一番ですが、避けた方がいい食材と摂取したほうがいい食材を提示します。
注意が必要なプリン体の多い食事
プリン体は、摂りすぎると血清尿酸値を上昇させ、痛風のリスクを高めます。1日の摂取量は400mg程度を目安にするのが理想的です。
「量」と「濃度」の両方に注意: 鶏レバーやあんこうの肝などはプリン体が極めて多いため、少量に抑えましょう。一方で、ビールのように濃度は低くても、飲む量が多いと結果的に大量のプリン体を摂取することになるため注意が必要です。
調理の工夫: プリン体は水に溶けやすいため、肉や魚は「茹でる」「煮る」ことで量を減らせます。ただし、溶け出した煮汁(スープ)まで飲み干さないようにしましょう。かつお節や煮干しを大量に使ったラーメンのスープを飲み干す習慣がある方は注意が必要です。
【食品別】プリン体含有量の目安(100gあたり)
| 分類 | 含有量の目安 | 具体的な食材 | 医師からのアドバイス |
| 極めて多い | 300mg〜 | 鶏レバー、白子、あん肝、一部の魚の干物(マアジ、マイワシ)、ビール酵母 | 【要注意】 いわゆる「旨味の塊」です。尿酸値が高い時期は、できるだけ控えたいグループ |
| 多い | 200〜300mg | 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ | 【控えめに】 レバー類は種類を問わず高めです。お刺身ならカツオよりはタラやタイなどの白身の魚が安心 |
| 普通 | 100〜200mg | 豚・牛・鶏の各部位、一般的な魚の切り身、ほうれん草(芽) | 【適量を守る】 肉や魚のメイン料理はこの範囲が多いです。1日の総摂取量を抑える意識が大切 |
| 少ない | 50mg以下 | 牛乳、ヨーグルト、チーズ、卵、豆腐、ご飯、パン、麺類、野菜全般 | 【おすすめ】 乳製品や卵は、タンパク質源として非常に優秀です。特に低脂肪乳製品は排出を助けます |
果糖(フルクトース)の過剰摂取を避ける
意外な盲点が、ジュースや甘い菓子に含まれる「果糖」です。果糖は体内で分解される際、尿酸の産生を促してしまいます。果物そのものを適量食べるのは良いのですが、甘いジュースやエナジードリンク、お菓子を習慣的に摂っている方は、尿酸値が下がりにくい傾向にあります。キシリトールも代謝の際に尿酸を上昇させます。果物、野菜、はちみつは尿酸を上昇させないという報告もありますが、甘い果物は控えたほうがいいでしょう。
尿酸を下げる食材:乳製品、コーヒー、チェリー、ビタミンC
ガイドラインでは、尿酸値を下げる、あるいは痛風リスクを低減させることが報告されている食品も挙げられています。牛乳やヨーグルトなどの乳製品には、尿酸を外に出しやすくする働きがあることが研究で分かっています。 特に低脂肪の乳製品を毎日摂取している人は、痛風の発症リスクが低いというデータがあります。コーヒーに少しミルクを入れたり、おやつにヨーグルトを食べたりするのは、非常に理にかなった習慣です。
乳製品(特に低脂肪): 多くの研究で尿酸の排出を助ける働きがあり、痛風リスクを下げることが報告されています。乳タンパク質(カゼインやラクタルブミン)が消化されると、腎臓での尿酸排泄を促す作用があり、 低脂肪乳やプレーンヨーグルトを毎日摂ることで、尿酸値の低下が期待できます。
コーヒー:特有の尿酸低下効果があることが分かっています。カフェインの効果だけでなく、コーヒーに含まれる強力な抗酸化物質のクロロゲン酸などが、インスリン感受性を高め、尿酸値を下げると推測されています。1日4〜5杯飲む人で最もリスクが低いというデータがありますが、カフェインの過剰摂取は身体へ負担をかけます。700mlが上限です。
チェリー:チェリーに含まれるアントシアニンという色素に強い抗炎症作用があり、さらに尿酸値を下げる働きも確認されています。痛風発作の頻度を35%〜75%減少させるという報告もあります。
ビタミンC:ビタミンCには、腎臓での尿酸の再吸収を抑え、尿への排泄を助ける働きがあります。1日500mg程度の摂取で有意に尿酸値が下がることが示されています。ただし、過剰摂取は尿路結石のリスクになるため、まずは野菜や果物からしっかり摂ることが推奨されます。
食物繊維:摂取量が多いほど、高尿酸血症の発症リスクが低いというデータがあります。
推奨される食事スタイル「DASH食」と「地中海食」
最近では、特定の栄養素だけでなく、食事全体の構成が注目されています。
DASH食: 果物、野菜、ナッツ、低脂肪乳製品を多く摂り、肉類や甘味飲料を控えるスタイルで、血清尿酸値の低下が確認されています。
地中海食: 魚、野菜、ナッツ、豆類を豊富に摂る食事も、尿酸値の低下と関連があることが知られています。
十分な水分補給、野菜や海藻の摂取
尿酸をしっかり外に出すためには、1日の尿量を2,000mL以上に保つことが目標です。水やお茶などでこまめに水分を摂りましょう(※心臓や腎臓病などの持病がある方は、適切な飲水量を主治医に確認してください)。
尿路結石の予防としては、尿を「アルカリ性」に傾けることが大切です。尿が酸性だと尿酸が溶けにくく、結石ができやすくなります。野菜や海藻、きのこ類は尿をアルカリ性に近づけてくれるため、野菜・海藻は尿をアルカリ化することで尿酸を尿から出しやすくするため、尿路結石の予防に役立ちます。
お酒との付き合い方
「ビールはダメだけど焼酎なら大丈夫ですよね?」という質問をよく受けますが、 結論から言うと、「お酒の種類に関わらず、アルコール自体が尿酸値を上げる」というのが医学的な答えです。
アルコールは体内で分解される過程で尿酸を作ります。さらに、アルコールには利尿作用があるため、体が脱水状態になり、血液中の尿酸濃度が上がってしまいます。 確かにビールはプリン体が多いので特に注意が必要ですが、ウイスキーや焼酎であっても、アルコール摂取が多ければ同様です。
適量の目安:飲む量が多いほどと痛風リスクがあがるとされますが、ガイドラインでは 日本酒なら1合、ビールなら350~500ml缶1本、ウイスキーなら60mを上限。ワインは148mlまでは痛風リスクを上げないとしています。
生活習慣で気をつけるべきこと
食事以外で、尿酸値を下げるために大切なことが2つあります。
肥満の解消
内臓脂肪が溜まると、尿酸が体内で作られやすくなり、排出も妨げられます。実は、厳しい食事制限をするよりも、体重を数キロ落とす(減量する)方が、尿酸値が劇的に下がることが多々あります。
運動の種類に注意
「運動して汗をかけば健康になる」と思われがちですが、尿酸値が高い方には注意点があります。 息が上がるような「激しい筋トレ」や「全速力でのランニング」などの無酸素運動は、一時的に尿酸値を急上昇させます。また、過度な発汗による脱水も痛風発作のトリガーになります。 歩行、ジョギング、サイクリングなどのなどで少し脈が速くなる程度の有酸素運動を1日30~60分行うのが有用です。しっかり水分を摂りながら、無理のない範囲で行いましょう。
痛風時の注意点
注意していただきたいのは、「痛風発作が起きた瞬間に、自己判断で尿酸を下げる薬を飲み始めること」です。 発作中に尿酸値を急激に動かすと、かえって痛みが悪化したり、長引いたりすることがあります。まずは痛みを抑える治療を優先し、尿酸を下げる治療は落ち着いてから始めるのが鉄則です。必ず医師の指示に従ってください。
まとめ
高尿酸血症の改善は、短期間の「我慢」ではなく、無理のない「習慣」に変えることが近道です。以下のできることから始めましょう。
- プリン体の多い食材を知る
- 尿酸を下げる食材をとる
- ジュースを避けて水にする
- アルコールを減らす
- 肥満解消の有酸素運動
尿酸値が高い場合は、痛みがなくても、血液検査の結果に目を向け、自分の体をいたわってあげてください。数値が改善しない場合は、お薬の力を借りることも大切です。
※食事や運動に関しては大きな変化はないと思われますが2026年12月に新しいガイドラインが出る予定になっています。
書いた人
石井優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:教育医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
いしい医院 内科・消化器内科
住所:〒140-0015 東京都品川区西大井3-6-17
電話番号:03-3771-3933
休診日:水曜、土曜午後、日曜、祝日
| 時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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