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医療豆知識

子どものゲームのエビデンス|良い影響と悪い影響|医師監修|

はじめに

私の長男は中学受験が終わり、中学校に入学しましたが、「朝から晩までゲームばかりしている」「声をかけると不機嫌」というのが最近の悩みです。

反抗期なんだとは思いますが、「このままで将来の学業や健康は本当に大丈夫だろうか」と心配になります。

「ゲームは脳に悪いからやめなさい」と一律に取り上げてしまえば簡単かもしれません。しかし、現在の子供たちにとってゲームは大切なコミュニケーションツールでもあります。

では、医学的に見てゲームは「毒」なのでしょうか、それとも「薬」なのでしょうか。

今回、世界中の質の高い医学論文(PubMed等のデータベース)を精査し、一人の親として、そして医師としての視点でエビデンス(科学的根拠)をまとめました。見えてきたのは、ゲームは一概に悪とは言えないものの、付き合い方を間違えると「無視できないリスク」に変わるという事実です。

不安を抱える親御さんへ向けて、最新の医学的知見をもとに「ゲームとの正しい付き合い方」を分かりやすく解説します。


【メリット】「ゲームで脳が鍛えられる」は本当か?

まずは、親御さんが意外に感じるかもしれない「ゲームの良い影響」からお話しします。特定のゲームが脳の認知機能にプラスに働くことが、信頼性の高い研究で次々と分かっています。

空間把握能力や情報処理スピードの向上

複数の研究データを統合した質の高い解析(Bediouらの研究・2018年)において、アクションゲームを継続的にプレイすることで、空間認識能力や、複数の情報を瞬時に処理する能力(視覚的注意力)が明確に向上することが確認されています。画面内のどこに何があるかを瞬時に見分ける力は、ゲーム特有の速い展開によって鍛えられます。

論理的な問題解決能力の育成

「どうすればクリアできるか」を考える戦略的ゲーム(RPGやシミュレーションなど)のプレイは、子どもの問題解決能力を高めることが追跡調査で確認されています。この論理的思考の訓練が、結果として翌年の学業成績の向上につながる傾向も報告されています(Adachi 2013)。

社会性と共感性の発達

オンラインゲームに対して「暴言」や「いじめ」といったネガティブな印象を持つ方も多いでしょう。しかし、仲間と協力して目標を達成する「協力型(向社会的)ゲーム」のプレイは、現実世界における他者への共感性を高め、人助けなどの利他的な行動を有意に増加させることが分かっています(Greitemeyerらの研究・2014年)。

【誤解しやすいポイント】

「ゲーム内の課題を素早くクリアする力」が伸びたからといって、そのまま「学校のテストの点数が上がる力」に直結するわけではない、ということです。ゲームで培った能力は、あくまで似たような作業においてのみ発揮されやすいという限界を知っておくことが大切です。


【デメリット】「依存」と「心身」のリアルなリスク

一方で、過剰なゲーム使用が子どもたちの心身にもたらすリスクは深刻です。ここでは、最も確度の高いエビデンスに基づき、具体的な影響を4つの項目に分けて解説します。

睡眠障害への強力な悪影響

精神面への影響は家庭環境などの要素も大きいですが、「ゲームが睡眠を破壊する」という生理学的なダメージは明確な事実です。就寝前のゲームプレイは、睡眠時間を短縮させ、睡眠の質を著しく低下させる強力なリスクファクターであることが分かっています(Hale 2015)。成長期の子どもにとって、睡眠不足は身体の発育や日中の集中力低下に直結します。

視力低下(近視)の進行

デバイス画面での長時間のゲームプレイを含むスクリーンタイムは、小児の近視の発症、および進行リスクと明確に関連していることが確認されています(Lanca 2020, Huang 2015)。至近距離で画面を凝視し続けることが、眼球の発達に物理的な負担をかけています。

ゲーム障害(依存)と脳の報酬系の変化

「1日何時間」という数字以上に問題なのは、自分でコントロールを失う「依存状態」です。初期段階での長時間のプレイは将来の依存発症を予測し、依存状態に陥ると学業成績の低下に直結します(Gentile 2011, Brunborg 2014)。

さらに、重度の依存状態にある脳内では、薬物依存と同様に、快楽を感じるドーパミン経路(報酬系)の機能低下が起きていることが画像診断で指摘されています(Palaus 2017)。

精神・行動面への悪影響と「心のSOS」

長時間のスクリーンタイムは、不安や抑うつ、多動性などの行動問題を、時間が長くなるほど悪化させることが分かっています(Eirich 2022)。

また、長時間のプレイが後の注意力低下(ADHD症状)のリスクを高めることや、対戦型・暴力系ゲームへの過度な曝露が、時間経過とともに攻撃的な思考や素行問題の増加と関連することも報告されています(Anderson 2010, Gentile 2012, Lobel 2017)。

【背景にある双方向性のリスク】

ここで強調しておきたいのは、ゲームが「原因」であると同時に、「結果」でもあるという事実です。近年の研究では、元々ADHD(注意欠如・多動症)の傾向や、抑うつ的な気分などの「心のSOS」を抱えている子どもが、現実の辛さからの逃避先としてゲーム依存に陥りやすいという、双方向の関連が指摘されています(Wong 2025)。端的に言うと、「ゲームのやりすぎが問題を悪化させることもあるし、もともとの問題がゲーム依存を引き起こすこともある」という行き来する関係。ただゲームを取り上げるだけでは根本的な解決にならないケースが多いのはこのためです。


ジャンルによって全く違うゲームの影響

一言で「ゲーム」と言っても、内容によって心身への影響は大きく変わります。

  • アクションゲーム: 瞬発力や視覚的な注意力を高める効果が強い反面、強い刺激に慣れてしまいやすい側面があります。
  • 戦略系(シミュレーション・RPGなど): 「どうすればクリアできるか」を論理的に考えるため、問題解決能力の向上につながりやすいジャンルです。
  • 協力型ゲーム(マルチプレイ): 仲間と役割分担をしながら進めるため、チームワークやソーシャルスキルの発達に役立ちます。
  • 対戦型・暴力系ゲーム: 常に他者と競い合うためストレスがかかりやすく、プレイ直後に短期的な興奮や攻撃的な思考が一時的に高まることは報告されています。ただし、それが長期的な人格の変化や暴力性の増加にまでつながるかについては研究間でも結論が分かれており、家庭環境などの影響も大きいとされています。

ゲーム障害の診断について

「1日3時間以上やっているから依存症だ」と時間だけで区切ることはできません。WHO(世界保健機関)が定める「ゲーム障害」の診断において本質となるのは、「自分でプレイ時間をコントロールできないこと(制御不能)」、そして「睡眠や学業など日常生活に支障が出ているのに優先してしまうこと(機能障害)」です。医学的な基準(ICD-11)では、これらの状態が長期間(通常は12か月以上)続く場合に診断されます。


まとめ

ゲームは現代の子どもたちにとって、単なる遊びではなく大切なコミュニケーションツールです。しかし、付き合い方を間違えると、心身の発達に深刻なブレーキをかけてしまいます。

「ゲームばかりしていてヤバい」と焦るお気持ちはよく分かります。今日私が、妻に言った言葉です。しかし、まずは深呼吸をして、お子さんがどんなゲームに夢中になっているのか、現実に何かストレスを抱えていないかを冷静に観察してみてください。

エビデンスが示す通り、ルールを守り、適切なジャンルを選べば、ゲームはお子さんの能力を引き出すツールにもなり得ます。頭ごなしの禁止ではなく、対話を通じ、自分でルールを作ってもらうなど、より良い共存の道を探っていきましょう。

私も子供が納得できるルールを一緒に作成したいと思います。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士


いしい医院 内科・消化器内科総合内科専門医・消化器病学会専門医・消化器内視鏡学会専門医・肝臓学会専門医・リウマチ専門医住所:〒140-0015 東京都品川区西大井3-6-17
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