発熱や風邪症状に関する診察は、12時と18時の枠で行っております。診察をご希望の方は、事前にお電話で予約をお取りください。
電話
Web予約
友達登録
アクセス
医療豆知識

慢性腎臓病(CKD)とは?クレアチニン・eGFR・タンパク尿・症状・改善方法について解説

内科医として日々診療をしていると、健康診断の結果を手に「先生、血液検査でクレアチニンが高いと言われたのですが」「タンパク尿が出ていて、eGFRが低いと書かれていました。大丈夫でしょうか」と不安そうに来院される方にたくさんお会いします。

この「腎機能低下が疑われる」状態が長く続く病気を「慢性腎臓病(CKD)」と呼びます。現在、日本の成人の約7人に1人、約1480万人がCKDに該当すると推計されており、もはや誰もがなり得る身近な病気です。

かつては「慢性腎不全」という言葉がよく使われていました。慢性腎不全は腎機能低下が高度に進行し、透析が一歩手前に迫った重い状態を指すことが多い言葉でした。一方、現在の「CKD」という概念は、まだ症状がないごく初期の段階から病気を捉え、早期発見で進行を抑える(透析予防につなげる)ための幅広い枠組みとして使われています。

今回は、日本腎臓学会が発行した最新の『CKD診療ガイド2024』や国際的なガイドラインなどの確かな医学的知見をもとに、CKDの正体から、明日から実践できる予防・改善方法までを分かりやすく解説します。


クレアチニンが高い・eGFRが低いと言われたら?(病態と定義)

そもそも腎臓は、腰の少し上あたりに左右1つずつある、そら豆のような形をした臓器です。血液をフィルターのようにろ過して老廃物を尿として捨てるだけでなく、血圧の調整、血液を作るホルモンの分泌、骨を丈夫にするビタミンDの活性化など、体を正常に保つための多彩な働きを担っています。

最新の『CKD診療ガイド2024』では、CKDを次のように定義しています。 1つ目は「尿の異常(特にタンパク尿)、画像検査、血液検査などで腎臓の障害が明らかであること」。 2つ目は「eGFR(推算糸球体ろ過量)が60未満に低下していること」。 この1か2、あるいは両方の状態が「3ヶ月以上続いている」場合、CKDと診断されます。

ここで出てくる「eGFR(イージーエフアール)」とは、年齢と血液検査の「クレアチニン」という筋肉由来の老廃物の数値から計算されるスコアです。腎臓が1分間にどれだけの血液をろ過できるかを示しています。若い健康な人は100前後ありますが、これが60を下回ると、腎臓のろ過機能低下が疑われます。

ただし、一度だけの検査異常では診断できず、3か月以上持続しているか確認することが重要です。特に高齢者では、加齢によってeGFRがある程度低下することがあります。そのため、eGFRだけでなく、タンパク尿の有無や数値の推移を総合的に評価して判断していくことになります。

CKDステージ(重症度)とは?

CKDの進行度は、このeGFRの数値によって「ステージ(G1〜G5)」に分類されます。健康診断などでご自身のeGFRを確認し、現在どのステージにあたるのかを知っておくことが大切です。

  • CKDステージeGFR値(mL/min/1.73㎡)腎機能の状態一般的な説明
    G190以上正常または高値腎機能は保たれているが、タンパク尿など腎障害の所見あり
    G260〜89軽度低下軽度の腎機能低下。タンパク尿の有無が重要
    G3a45〜59軽度〜中等度低下CKDとして注意が必要な段階
    G3b30〜44中等度〜高度低下貧血・高カリウム血症など合併症に注意
    G415〜29高度低下透析予防のため厳密な管理が必要
    G515未満末期腎不全透析・腎移植を検討する段階

数字が小さくなる(ステージが進む)ほど、腎機能低下が進行していることを意味します。

また、実際のCKD診療では、上記のeGFRによる「G分類」に加え、タンパク尿の程度を示す「A分類」を組み合わせて重症度を評価します。特にタンパク尿が多いほど、将来的な透析や心血管病(心筋梗塞・脳卒中など)のリスクが高いことが知られています。

CKDヒートマップ

クレアチニンが高くなる原因・CKDの原因

腎臓の機能が慢性的に低下してしまう原因はどこにあるのでしょうか。

かつては、腎臓そのものに炎症が起きる「慢性糸球体腎炎」が最も多い原因でした。しかし現在、一番の引き金となっているのは「糖尿病」と「高血圧」です。 糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、腎臓内の細い血管が傷つき、ろ過機能が壊れていきます。最近では、従来の「糖尿病性腎症」よりも広い概念として、「糖尿病関連腎臓病(DKD)」という言葉が使われるようになっています。 また、血圧が高い状態が続くと、血管に強い圧力がかかり続けて動脈硬化が進み、腎臓の血管が硬く狭くなります。これが「高血圧性腎硬化症」です。

タンパク尿を放置するとどうなる?(症状とリスク)

CKDで最も怖いのは、「CKDの初期段階ではまったく自覚症状がない」という事実です。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、腎機能がかなり低下するまで症状が出にくいという特徴があります。

もし「少しタンパク尿が出ているだけだから」と放置して腎機能がかなり低下してくると、ろ過しきれなくなった水分が体に溜まって手足や顔がむくむ、老廃物(尿毒素)が蓄積して強いだるさや吐き気を感じる、尿を濃縮できなくなって夜間に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)、といった症状が出てきます。また、血液を作るホルモンが出なくなるため「腎性貧血」となり、階段を登るだけで息切れがするようにもなります。

症状が出てから慌てて受診しても、失われた腎機能を取り戻すことは非常に困難です。だからこそ、無症状のうちに健康診断の数値で異常を見つけることが何よりも重要になります。

基本的な治療方針

CKDの治療目標は「元の健康な腎臓に戻すこと」ではありません。低下した腎機能を完全に元通りにすることは難しいため、治療の最大の目標は「今の機能を維持してこれ以上悪くしないこと(将来の透析予防)」と「心筋梗塞や脳卒中を防ぐこと」の2点になります。実は、腎臓が悪い人は心臓や血管の病気になりやすいという「心腎連関」という現象が明確に証明されています。

私たちが患者さんにまずお願いする基本的な治療(非薬物療法)は、生活習慣の改善です。特に「減塩」と「肥満の解消」は、腎臓を守るための大きな柱となります。 それに加えて、血圧の薬などを処方する「薬物療法」を行います。高血圧は腎臓を悪化させる大きな原因ですから、処方されたお薬を毎日決まった時間にきちんと飲み、自宅で血圧を測って数値を記録していただくことが、治療の第一歩です。

実際の薬物療法

では、私たち医師はどのような戦略で治療を組み立てているのでしょうか。近年の医学の進歩により、CKDの治療戦略は劇的に変わりました。『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』や、国際的なCKDガイドラインであるKDIGOなどで示された新しい知見をお伝えします。

薬物療法の分野で大きな転換点となったのが、「SGLT2阻害薬」の登場です。これは元々、尿の中に糖を捨てて血糖値を下げる糖尿病の薬として開発されました。しかし、DAPA-CKD試験やEMPA-KIDNEY試験などの大規模臨床試験において、CKDの進行を強力に抑える効果があることが次々と証明されました。現在では、一定条件を満たすCKD患者さんでは、糖尿病の有無に関わらず腎保護目的で使用されるようになっています。

また、血圧の薬の中でも「RA系阻害薬(ARBやACE阻害薬と呼ばれる降圧薬)」は、単に血圧を下げるだけでなく、腎臓内の圧力を下げてタンパク尿を減らす、腎臓を守る作用(腎保護作用)を持っています。以前は、腎機能がかなり悪化したステージではこの薬を中止するべきか議論がありました。しかし近年のガイドラインでは、一律に中止することは推奨されない(継続した方が予後が良い可能性がある)という見解が示されています。

さらに腎性貧血に対しては、注射だけでなく、近年は飲み薬で治療できる新しいタイプの貧血治療薬も登場しています。

CKDを改善する食事や習慣

腎臓を守る食事や具体的な生活習慣のアドバイスについて、確かな医学的知見をもとに解説します。

徹底した減塩

世界中の研究結果から、塩分の摂りすぎが血圧を上げ、タンパク尿を増やして腎機能を悪化させることが分かっています。CKD診療ガイドラインでは、1日の食塩摂取量を「6g未満」に抑えることが推奨されています。日本人の平均摂取量はまだ10g程度あるため、意識して減塩に取り組む必要があります。ラーメンやうどんのスープは残す、醤油は「かける」のではなく「小皿に出してつける」、出汁の旨味や酸味(レモンや酢)を効かせて薄味をカバーするなどの工夫が効果的です。

適切なタンパク質制限

昔は「腎臓が悪いならとにかくタンパク質を減らしなさい」と指導されていました。しかし過度なタンパク質制限は、筋肉量が落ちて寝たきりの原因になる「サルコペニア」や低栄養を引き起こす危険性が指摘されています。特に高齢者では、過度なタンパク質制限によって筋力低下やフレイルが進む危険もあります。現在のガイドラインでは、CKDのステージに合わせて、無理のない範囲で適切な量を摂取することが推奨されています。自己判断で極端に肉や魚を抜くのではなく、主治医や管理栄養士と相談して適量を見つけてください。

適度な運動

かつては「腎臓が悪い人は安静第一」と言われていました。しかし最新の知見では、肥満を伴わない保存期のCKD患者さんにおいても、ウォーキングなどの適度な有酸素運動を行うことが、腎機能や身体機能の維持に役立つと考えられています。筋肉を動かすことでインスリンの効きが良くなり、血圧の安定にもつながります。

コーヒー摂取について

日常的な習慣として、一部の観察研究では、適度なコーヒー摂取が腎機能低下リスクの低下と関連したという報告があります。コーヒーに含まれる抗酸化作用が良い影響を与えていると考えられています。ただし、これらは主に観察研究による結果であり、「コーヒーを飲めばCKDが改善する」と証明されたわけではありません。積極的に飲むことでCKDを治療できるわけではなく、飲み過ぎは不眠や胃腸の負担になるため、ブラックで1日1〜2杯程度を楽しむのがよいでしょう。

よくある質問(Q&A)

診察室で患者さんからよく受けるご質問にお答えします。

Q1. クレアチニンが少し高いだけでも受診したほうがよいですか?

A1. クレアチニンは筋肉量にも影響されるため、筋肉質の方ではやや高く出ることがあります。しかし、eGFR低下やタンパク尿を伴う場合はCKDの可能性があるため、一度は医療機関で評価を受けることをおすすめします。

Q2. eGFRの数値は改善しますか?CKDは治る病気でしょうか?

A2. 一度壊れてしまった腎臓の組織を完全に元の状態に戻す(完治させる)ことは、現在の医学では困難です。しかし、早期に発見して適切な食事療法や血圧管理、新しいお薬などを使用すれば、eGFRの低下を食い止めたり、進行を極めて緩やかにすることは十分に可能です。

Q3. CKDと診断されたら、絶対に食べてはいけないものはありますか?

A3. 「これを食べたら絶対にダメ」というものはありませんが、最も注意すべきは「塩分」です。また、CKDのステージが進行した方(G3b以降など)は、バナナや生野菜などに含まれる「カリウム」や、乳製品・練り物などに含まれる「リン」の摂取制限が必要になることがあります。自己判断での極端な食事制限は栄養不良を招く危険があるため、必ず主治医の指導を受けてください。

Q4. 「水をたくさん飲むと腎臓に良い」と聞きましたが、本当ですか?

A4. それは誤解です。2023年のガイドラインでも、保存期CKD患者さんが通常よりも意図的に飲水量を増やすことは推奨されない、と明記されています。腎臓の働きが落ちている状態で無理に水をたくさん飲むと、処理しきれずに体内に水分が過剰に溜まり、むくみや心不全の悪化につながる場合があります。喉が渇いた時に適量を飲む「口渇に応じた飲水」が基本です。

Q5. 腎臓の働きをよくするサプリメントや民間療法はありますか?

A5. 医学的に「飲めば腎臓の機能が回復する」と証明されたサプリメントや民間療法は一つもありません。それどころか、成分の分からない健康食品やハーブなどを摂取した結果、かえって腎臓に深刻なダメージを与えてしまう「薬剤性腎障害」を起こすケースが実際の現場では後を絶ちません。インターネット上の情報には十分注意し、何かを始める前に必ず主治医に相談してください。

Q6. 70代ですが、健康診断でeGFRが「58」と低く出ました。年齢のせいでしょうか?重い病気ではないかと不安です。

A. eGFRは加齢とともにある程度低下するため、ご高齢の方では60未満であっても直ちに重い病気とは限りません。実は、腎臓の機能(eGFR)は40歳頃から毎年0.5〜1程度ずつ自然に低下していくことが分かっています。そのため、20〜30代では「90〜100前後」ある数値も、60代で「60〜70程度」、70〜80代では「50台」になることは決して珍しくありません。

現在のCKD診療では、eGFRの数値だけで一喜一憂するのではなく、「タンパク尿の有無」や「数年間の数値の推移」を含めて総合的に判断します。例えば、高齢の方でeGFRが50台であっても、「タンパク尿が出ておらず、ここ数年数値がほぼ変わっていない」のであれば、加齢による自然な変化として経過観察になるケースも多くあります。一方で、タンパク尿を伴う場合や、短期間で急激に数値が低下している場合、あるいは糖尿病や高血圧の持病がある場合は、年齢に関係なくCKDが進行するリスクがあるため注意が必要です。

生活の注意点

日常生活で特に注意していただきたいのが「シックデイルール」と「市販の鎮痛薬」です。

風邪をひいて熱が出たり、下痢や嘔吐をしたりして食事がとれない日のことを「シックデイ」と呼びます。体が脱水状態に傾いている時に、普段通りに血圧の薬(RA系阻害薬)や利尿薬、SGLT2阻害薬を飲むと、急激に腎臓の働きが悪化する危険があります。このような日は、一部の薬を一時的にお休み(休薬)する必要があります。どの薬を休むべきか、あらかじめ主治医に確認しておきましょう。

また、頭痛や関節痛の際によく使われる市販の痛み止め(ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬=NSAIDs)は、腎臓の血管を収縮させて血流を悪くする副作用があります。市販薬では「イブ」や「バファリンEX」などにもNSAIDsが含まれる場合があります。CKDの方が安易に飲み続けると腎機能が一気に悪化することがあるため、痛みが辛い時は比較的腎臓に優しい「アセトアミノフェン」という成分の薬(用法用量を守れば安全に使用しやすい薬です)を選ぶか、医師に処方してもらうのが安全です。


こんな場合は早めに受診を(受診の目安)

CKDは早期発見が何よりも大切です。以下のような項目に当てはまる場合は、自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 健診でeGFR 60未満を指摘された

  • 尿蛋白(タンパク尿)が陽性だった

  • むくみや夜間頻尿が続く

  • 糖尿病や高血圧がある

  • 家族に透析患者がいる

まとめ:患者が明日から実践できるポイント

CKDは早期発見と毎日の積み重ねが予後を大きく左右する病気です。明日から実践できるポイントを3つに絞ってお伝えします。

  1. 1日6g未満の減塩を意識する(麺類のスープを残すだけでも立派な治療です)

  2. 市販の痛み止め(NSAIDs)の飲み過ぎに注意する

  3. 健康診断の結果を振り返り、「eGFR」や「尿蛋白(タンパク尿)」の数値を確認する

少しでも不安があれば、遠慮せずに私たちのような身近な内科クリニック、あるいは腎臓専門医を頼ってください。一緒に大切な腎臓を守っていきましょう。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:教育医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士


いしい医院 内科・消化器内科総合内科専門医・消化器病学会専門医・消化器内視鏡学会専門医・肝臓学会専門医・リウマチ専門医住所:〒140-0015 東京都品川区西大井3-6-17
電話番号:03-3771-3933
休診日:水曜、土曜午後、日曜、祝日

時間
9:00 ~12:30
16:00 ~18:30

品川区西大井・大井・大田区大森山王エリアので内科・消化器内科・健康診断・予防接種・訪問診療などの受診をお考えの方はいしい医院をご利用ください。皆様の身近なかかりつけ医を目指しております。

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事

PAGE TOP