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医療豆知識

喘息と咳喘息、妊娠中や効果ある食事など最新治療を医師が解説

「熱はすっかり下がったのに、咳だけがもう3週間も続いています」

「夜中や明け方になると、胸の奥がゼーゼーして息苦しくて目が覚めてしまいます」

日々の外来診療をしていると、このような悩みを抱えて受診される患者さんにお会いします。市販の風邪薬や咳止めを飲んでも一向に良くならず、夜も眠れずに体力を消耗してしまう。とても辛いですよね。

実はこれ、ただの「長引く風邪」ではなく、「気管支喘息(以下、喘息)」が隠れているサインかもしれません。一般的な風邪による咳は1〜2週間で改善することが多く、3週間以上続く咳や、夜間・明け方に悪化する咳は、一度喘息を疑う必要があります。

喘息というと、「子供の病気でしょう?」と考える方も少なくありません。しかし、大人になってから突然発症するケースは珍しくなく、成人喘息では成人発症型が半数以上を占めるとされています。

今回は、長引く咳や息苦しさの原因となる喘息について、日本の最新ガイドライン(喘息予防・管理ガイドライン2024)やGINA2026といった国際的な基準、さらに質の高い医学研究のデータをもとに解説します。

病態と日本ガイドラインから見る定義:喘息とはどういう状態か?

喘息とは、空気の通り道である「気管支」が慢性的に炎症を起こし、敏感になっている病気です。日本のガイドラインでは、喘息の本態は「気道の慢性炎症」であると定義されています。

分かりやすく例えるなら、気管支の中で「常にくすぶっているボヤ」がある状態です。普段はなんとなく生活できていても、ボヤがあるせいで気管支の内側は過敏になり、ちょっとした刺激に過剰に反応してしまいます。刺激を受けると、気管支を取り囲む筋肉が縮こまり、さらに粘膜の腫れや痰の分泌によって空気の通り道が狭くなります。これが「喘息の発作」です。

原因と症状:喘息を疑うサイン

喘息の原因は大きく分けて2つあります。ひとつはダニ、ハウスダスト、ペット、花粉などの「アレルギー性」のもの。もうひとつは、タバコの煙、天候の変化、疲労、ストレス、ウイルス感染などが引き金となる「非アレルギー性」のものです。

典型的な症状には以下のようなものがあります。

  • 息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が鳴る
  • 息苦しさ、胸の締め付けられるような圧迫感
  • 発作的な激しい咳

特に「夜間から明け方」にかけて悪化しやすいのが特徴です。季節の変わり目や天候の変化で症状が悪化する方もいます。

診断と「咳喘息」について

診断には、スパイロメトリー(肺機能検査)による気流制限の確認が重要です。最近は、呼気NO検査(FeNO)も普及しています。これは、特に「好酸球性炎症」と呼ばれるタイプの気道炎症があると数値が高くなる傾向があり、診断の参考になります。また、血液検査で好酸球が多い場合、喘息やアレルギー性炎症を疑う参考になります。

また、よく耳にする「咳喘息」は、喘息と非常に近い病態です。ゼーゼーや息苦しさはなく、乾いた咳だけが続きます。適切な治療を行わず放置した場合、約30%前後が典型的な喘息へ移行すると報告されています。長引く咳は、早めの内科受診が将来の喘息予防につながります。

治療の方針:炎症を抑える治療が基本

現在の喘息治療では、吸入ステロイド薬(ICS)を中心とした吸入療法が基本です。吸入ステロイドは、飲み薬に比べ全身性副作用はかなり少ないとされています。この吸入を毎日継続し、気管支の炎症というボヤを消し止めることが治療の根幹です。

かつては「発作が起きた時だけ、気管支を広げる薬(SABA)を吸う」治療が主流でしたが、現在では、発作止めだけに頼る治療では炎症を十分抑えられないことが分かってきました。炎症を放置すると、気道の構造変化(リモデリング)が進み、治療しても改善しにくい状態になってしまう可能性があるためです。

子供の喘息:大人と同じ治療なの?

お子さんが喘息と診断された際、「大人と同じ薬を使って大丈夫?」と不安になる親御さんは多くいらっしゃいます。結論から申し上げますと、「気管支の慢性炎症をステロイドで抑える」という基本的な考え方は、大人も子供も共通しています。

小さなお子さんでは、自分の力で深く吸い込むことが難しい場合があるため、専用の補助具(スペーサー)を使用して、薬を確実に肺へ届ける工夫を行います。年齢や症状に応じて、ステロイドと気管支拡張薬の配合吸入薬が使用されることもあります。

小児喘息において最も大切なのは、「発作を起こさせないこと」です。吸入を歯磨きと同じ毎日の習慣として定着させることが、健やかな成長を守る一番の近道です。

最新の国際基準(GINA)と日本の考え方

国際的なガイドライン「GINA」では、ブデソニド・ホルモテロール配合剤などを「症状がある時にレスキューとして吸入する方法」が軽症喘息で推奨されています。しかし、日本ではまず毎日の維持療法を基本とする考え方が重視されています。

日本では、医師の指導のもとで毎日しっかりと吸入を継続し、炎症の火種を消すことが最も安全で確実な管理方法とされています。症状が落ち着いているからといって自己判断でやめるのではなく、回数を減らしたい場合は必ず医師と相談し、計画的なステップダウンを目指してください。

妊娠中・授乳中の治療

妊婦さんが喘息発作を起こすと、お腹の赤ちゃんに酸素が届きにくくなるリスクがあります。吸入ステロイド薬は、妊娠・授乳中も継続して使用することが推奨されています。また、発作時の気管支拡張薬(SABA)も、吸入であれば胎児への影響は低いため、息苦しさがある場合は、自己判断で我慢せず、医師の指示に従って使用してください。

受診の目安と生活習慣・効果ある食事

以下のような症状がある場合は、喘息の可能性が高いため受診をお勧めします。

  • 夜間に咳や息苦しさで目が覚める
  • 会話や運動で息切れがする
  • ゼーゼー、ヒューヒューする
  • 市販薬を飲んでも2週間以上咳が改善しない

また、日常生活では以下を心がけてください。

  • 適正体重の維持: 減量でコントロールが改善するデータがあります。
  • 解熱鎮痛薬の注意: 一部の患者さんは、市販の痛み止め(NSAIDs)で重篤な発作を起こすことがあります。薬を買う際は必ず「喘息がある」ことを薬剤師に伝えてください。

※民間療法は科学的根拠が乏しいものが多いため、安易な自己判断での治療中断は避けてください。

まとめ

明日から実践していただきたいポイントです。

1. 「症状がない=完治」ではありません。医師の指示通りに吸入を続けてください。

2. 民間療法よりも、まずは科学的根拠に基づいた吸入療法を優先しましょう。

3. 痛み止めが必要な際は、アセトアミノフェンなどを選び、必ず薬剤師に相談してください。

長引く咳でお悩みの方は、決して我慢せず、まずはお近くの内科で相談してみてください。正しい診断と最新の治療が、あなたを苦しい咳から解放してくれるはずです。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:教育医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士


いしい医院 内科・消化器内科総合内科専門医・消化器病学会専門医・消化器内視鏡学会専門医・肝臓学会専門医・リウマチ専門医住所:〒140-0015 東京都品川区西大井3-6-17
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