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医療豆知識

麦茶の健康効果は本当?血液サラサラ・熱中症予防・カフェインゼロのメリットをエビデンスとともに解説

「夏といえば麦茶」というほど、私たち日本人にとって馴染み深い飲み物ですが、「実際のところ、麦茶って体にいいの?」と疑問に思ったことはありませんか?

「血液がサラサラになる」「熱中症予防に最適」といった噂を耳にすることも多いと思います。

今回は、麦茶が持つ健康効果の真偽について、医学的なエビデンス(科学的根拠)を交えながら、医師の視点で分かりやすく解説します。

麦茶とは?

麦茶は、大麦の種子を焙煎(煎って香ばしくすること)し、水やお湯で抽出した飲み物です。

緑茶や紅茶、コーヒーなどとは異なり、茶葉を使用していないためカフェインを一切含みません。また、カロリーや糖分もゼロです。

おすすめする理由:胃腸へのやさしさ

麦茶はカフェインを含まないため、胃酸分泌を刺激しにくく、胃の不快感や胃もたれが気になる方でも比較的飲みやすい飲料です。消化器に負担をかけずにたっぷりと水分を摂りたいときに、非常に適した選択肢となります。

麦茶の健康効果① 熱中症予防と水分補給

夏場や乾燥する季節の水分補給として、麦茶は非常に理にかなっています。

緑茶やコーヒーに含まれるカフェインには軽度の利尿作用があります。一方、麦茶はカフェインを全く含まないため、子どもや妊娠中の方、高齢者の日常的な水分補給としてより適しています。糖質ゼロであるため、急激な血糖値の上昇を気にせず飲める点も優秀です。

 麦茶とスポーツドリンク、熱中症予防にはどちらがいい?

よくある疑問として「熱中症予防には麦茶とスポーツドリンクのどちらが良いか」というものがありますが、シーンに合わせて使い分けることが重要です。

  • 日常生活でのこまめな水分補給 → 麦茶

  • 大量に汗をかく運動時や屋外作業 → スポーツドリンクや経口補水液

  • 発熱、下痢、嘔吐などの体調不良時 → 経口補水液

激しい発汗時には水分だけでなく塩分(ナトリウム)も失われます。麦茶には塩分がほとんど含まれていないため、大量に汗をかいた時はスポーツドリンク等に切り替えるか、塩飴などを併用してください。

麦茶の健康効果② 血流改善作用の可能性

大麦を焙煎する際に生じる香ばしい匂いの成分「ピラジン類」には、血流への良い影響が報告されています。小規模なヒトを対象とした試験において、麦茶を飲むことで血液の流動性が改善(血液が細い管を通りやすくなる)したというデータがあります。

ただし、これはあくまで「血流が良くなる傾向がみられた」という段階であり、「麦茶を飲めば動脈硬化が治る」「血栓が消える」と断定できるほどの証拠(エビデンス)ではありません。健康維持のサポート程度に捉えておくのが良いでしょう。

麦茶の健康効果③ 抗酸化作用

私たちの体は、ストレスや紫外線、加齢によって「活性酸素」が発生し、これが細胞を傷つけることで老化や生活習慣病(動脈硬化や糖尿病など)の一因となります。

麦茶には、ポリフェノールをはじめとする焙煎由来の成分が含まれており、基礎研究(試験管レベルの研究)において、この活性酸素の働きを抑える「抗酸化作用」があることが示唆されています。

麦茶の健康効果④ 冷えの予防に役立つ可能性

冷たい麦茶は体を冷やすイメージがあるかもしれませんが、実は「末梢血流(手足の先の血流)」を増加させる可能性が研究で報告されています。

ヒト試験において、麦茶の抽出物を摂取することで冷房などの冷環境下でも皮膚の表面温度の低下が抑えられたというエビデンスがあります。冷え性が気になる方は、温かい麦茶や常温の麦茶を飲むのがおすすめです。

麦茶は妊娠中・授乳中でも飲める?

全く問題ありません。むしろ積極的におすすめしたい飲み物です。

妊娠中や授乳中は、胎児や乳児への影響を考慮してカフェインの摂取量を控える必要があります。麦茶はカフェインゼロであるため、安心な水分補給として最適です。

赤ちゃんや子どもに麦茶を飲ませても大丈夫?

赤ちゃんや子どもにも安心して飲ませることができます。

生後半年ごろからの離乳食開始に合わせて、薄めた麦茶からスタートすることが一般的です。ジュースのように糖分を含まないため、子どもの虫歯予防の観点からも適しています。

麦茶の飲みすぎで副作用はある?

麦茶そのものに有害な副作用はありませんが、極端な水分の摂りすぎには注意が必要です。

短時間に大量の水分をガブ飲みすると、血液中のナトリウム濃度が薄まる「水中毒」を引き起こす恐れがあります。コップ1杯程度の量を、こまめに飲むのが理想的です。

また、心不全や慢性腎臓病などの持病があり、主治医から水分制限の指示を受けている方は、麦茶であってもその制限量の範囲内に収める必要があります。

水出しと煮出しはどちらがおすすめ?

  • 煮出し(お湯出し): 手間はかかりますが、ピラジン類などの香り成分やポリフェノールが抽出されやすくなります。

  • 水出し: 手軽に作れるのが最大のメリットで、すっきりとした味わいになります。

どちらで作る場合も、麦茶は傷みやすいため冷蔵保存し、できれば1〜2日以内を目安に飲み切るようにしましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 麦茶は毎日飲んでも大丈夫ですか?

A. はい、毎日飲んでも問題ありません。糖分やカフェインを含まないため、日常の水分補給として最適です。

Q. 麦茶は夜に飲んでも眠れますか?

A. 麦茶には覚醒作用のあるカフェインが含まれていないため、就寝前に飲んでも睡眠を妨げません。夜間の水分補給にも適しています。

Q. 麦茶と緑茶はどちらが健康にいいですか?

A. 目的によります。カテキンの抗菌作用や覚醒作用を求めるなら緑茶、胃腸への負担やカフェインを避けたい時は麦茶が優れています。

Q. 麦茶は血圧を下げますか?

A. 麦茶に直接的に血圧を下げる強い薬効はありません。しかし、適切な水分補給は循環血液量の維持に役立ちます。これが間接的に血圧の安定に寄与します。

Q. 麦茶は便秘に効きますか?

A. 直接的な下剤効果はありませんが、水分不足は便が硬くなる原因になります。こまめに麦茶で水分を摂ることは、便秘解消の基本として重要です。

Q. 麦茶を飲むと「足の攣り(こむら返り)」の予防になりますか?

A. 麦茶が足の攣りに直接効く、または予防するという医学的な証拠(エビデンス)はありません。足が攣ってしまう大きな原因の一つに脱水があります。そのため、麦茶でこまめに水分補給をすることは、脱水を防ぐという意味で間接的な予防にはつながります。しかし、足の攣りを防ぐためには、水分だけでなく筋肉の働きを調整するミネラル(塩分やマグネシウムなど)が必要です。麦茶にはそうしたミネラルがほとんど含まれていないため、足の攣りの確実な対策としては不十分です。

まとめ

麦茶は、熱中症予防や日常の水分補給として非常に優れており、胃腸にもやさしい飲み物です。

一部の研究で血流改善や抗酸化作用が報告されていますが、大規模な研究はありませんでした。これらはあくまで「健康をサポートする」ものと思ったほうがよさそうです。

砂糖たっぷりの清涼飲料水や、カフェインの多い飲み物に偏りがちな方は、安全で健康的な麦茶を毎日の習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献

  • Suganuma H, et al. Amelioratory Effect of Barley Tea Drinking on Blood Fluidity. Journal of Nutritional Science and Vitaminology. 2002;48(3):165-168.
  • Ashigai H, et al. Roasted Barley Extract Affects Blood Flow in the Rat Tail and Increases Cutaneous Blood Flow and Skin Temperature in Humans. Journal of Agricultural and Food Chemistry. 2018;66(5):1251-1257.
  • Etoh H, et al. Anti-Oxidative Compounds in Barley Tea. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 2004;68(12):2616-2618.

書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:教育医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士


いしい医院 内科・消化器内科、総合内科専門医・消化器病学会専門医・消化器内視鏡学会専門医・肝臓学会専門医・リウマチ専門医住所:〒140-0015 東京都品川区西大井3-6-17
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