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医療豆知識

はちみつの風邪 (咳と喉) に対するエビデンス

はじめに

コロナの時期は咳止めや解熱鎮痛剤の不足が問題になっていました。以前よりも入手困難になることは少なくなりましたが、薬不足は続いています。
薬がない時、皆さんはどうされていましたか。実は身近な食材に鎮咳(咳止め)の作用がある食材がありました。はちみつです。

はちみつは甘いので好きな人が多いと思います。息子もはちみつが大好きで以前お年玉を握りしめて買っていました。ただし子供も一歳以下はボツリヌス菌の感染の観点から推奨されません。


調べた範囲ですが、はちみつの性質とはちみつの鎮咳薬やプラセボ(偽薬)などとの比較研究を述べたいと思います。

要点だけ知りたいかたはまとめを読んでください。


はちみつとは何か


はちみつは、ミツバチが花の蜜を集めて、その蜜を自らの体内で特殊な酵素で分解し、巣で水分を飛ばして作る天然の甘味料です。

はちみつの作り方


ミツバチは花から蜜を集め、蜜嚢という器官で蜜を運びます。巣に戻ると他のミツバチに蜜を渡し、水分が蒸発するまで何度も蜜を吐き出しては再吸収します。この過程で蜜は徐々に濃縮され、はちみつが完成します。

はちみつの種類と性質


はちみつには多くの種類があり、その特性は採取される花の種類によって異なります。アカシア、レンゲ、ソバ、マヌカなど、様々な花源から作られるはちみつは、色や香り、味わいが全く異なります。単一の花から採れる「単蜜」と、複数の花から採れる「百花蜜」もあり、その組み合わせは無数にあります。例えば、マヌカハニーはニュージーランド特有のマヌカの花から採取され、特有の抗菌性が知られています。
はちみつの主成分は種類によって異なりますが、大体、水分20%、ブドウ糖35%、果糖40%、ショ糖数%となっているようです。微量成分としては、無機質として 鉄、ナトリウム、カリウムなど、酵素としてジアスターゼなど、他にアミノ酸、ビタミンB1、B2、パントテン酸なども含まれています。

長期保存が可能なはちみつ


はちみつは、高い糖度と抗菌作用のおかげで、腐ることがありません。古代エジプトの遺跡からも腐らずに残っていたはちみつが発見されています。つまり、はちみつは長期保存が可能な不朽の食品なのです。風味が変わるという点から一般の賞味期限は1~3年のようです。

はちみつの効果


消炎、造血、細胞賦活性作用などについて研究が行われています。

はちみつの注意点


はちみつは1歳未満の乳児には与えないようにする必要があります。これは乳児ボツリヌス症のリスクがあるためです。

小児のはちみつの投与量

前述したように一歳未満にはちみつを与えてはいけませんが、2歳から5歳に就寝前に2.5ml与えると咳が改善したとする論文があります。

日本のはちみつ

農林水産省の養蜂をめぐる情勢も時間があれば面白いので読んでみてください。はちみつの国内消費量は5万トンで自給率は5%、国内生産量が減少したとか、花粉交配用蜜蜂の貢献とか要約して色々書いてあります。1歳未満の乳児に蜂蜜を食べさせないように注意喚起もしています。

https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/bee.html

日本養蜂協会のホームページも必見です。人とみつばちの出会い、みつばちの種類、はちみつのQ&A、ロイヤルゼリーやプロポリスとは何かなど記載されています。

https://www.beekeeping.or.jp/products/definition


はちみつと咳の臨床研究

いくつか良さそうな臨床研究をまとめました。

〇Mashat GD, Hazique M, Khan KI, Ramesh P, Kanagalingam S, Ul Haq Z, Victory Srinivasan N, Khan AI, Khan S. Comparing the Effectiveness of Honey Consumption With Anti-Cough Medication in Pediatric Patients: A Systematic Review. Cureus. 2022 Sep 20;14(9):e29346. doi: 10.7759/cureus.29346. PMID: 36284810; PMCID: PMC9583571.

小児の咳に対するはちみつの有効性と市販の咳止め薬を比較した系統的レビューです。
・はちみつの有効性
複数の研究で、はちみつが小児の上気道感染症の症状を緩和し、通常の治療よりも効果的であることが示されています。
1歳以上の小児の咳に対し、はちみつはプラセボや無治療よりも優れた効果があり、一般的な咳止め薬と同等または優れた効果があることが示されてました。
はちみつは特に夜間の咳の重症度や頻度を改善し、睡眠の質を向上させます。
・市販の咳止め薬の安全性
2歳未満の乳幼児では、市販の咳止め薬の使用は避けるべきとされます。過剰投与や誤用による重篤な副作用や死亡例が報告されており、6歳未満の小児への市販の咳止め薬の使用は控えめにすべきと報告しています。適切な用量で使用すれば、市販の咳止め薬は比較的安全であるが、年齢に応じた慎重な投与が必要と報告しています。
本レビューでは、1歳以上の小児の咳に対してはちみつが有効であり、市販の咳止め薬よりも安全で効果的な選択肢となる可能性が示唆されていますが、さらなる研究が必要です。

〇Kuitunen I, et al. Honey for acute cough in children — a systematic review. Eur J Pediatr 182, 3949–3956 (2023). https://doi.org/10.1007/s00431-023-05066-1:
はちみつは、プラセボや無治療、咳薬よりも急性咳の症状を軽減する効果があることが示されました。
研究の質は低いと評価されていますが、はちみつが有効である可能性が示唆されています。
これらの研究は、はちみつが子供の咳に対して一般的な鎮咳薬よりも効果的である可能性があることを示しています。

〇 Oduwole O, Udoh EE, Oyo‐Ita A, Meremikwu MM. Honey for acute cough in children. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 4. Art. No.: CD007094. DOI: 10.1002/14651858.CD007094.pub5. Accessed 14 May 2024.
デザイン: ランダム化比較試験
方法: はちみつ単独または抗生物質との併用を、無治療、プラセボ、はちみつベースの咳止めシロップと比較。
結果: はちみつはサルブタモールやプラセボと比較して咳の持続期間を短縮し、特にケニアのダークハニーが最も効果的でした。

〇 Waris A, Macharia M, Njeru EK, Essajee F. RANDOMISED DOUBLE BLIND STUDY TO COMPARE EFFECTIVENESS OF HONEY, SALBUTAMOL AND PLACEBO IN TREATMENT OF COUGH IN CHILDREN WITH COMMON COLD. East Afr Med J. 2014 Feb;91(2):50-6. PMID: 26859020.
デザイン: ランダム化二重盲検試験
方法: はちみつ、サルブタモール、プラセボを急性発症咳の子供に投与。
結果: はちみつは症状の総合スコアを有意に改善し、プラセボやサルブタモールと比較しても優れていました。

〇Ayazi P, Mahyar A, Yousef-Zanjani M, Allami A, Esmailzadehha N, Beyhaghi T (2017) Comparison of the Effect of Two Kinds of Iranian Honey and Diphenhydramine on Nocturnal Cough and the Sleep Quality in Coughing Children and Their Parents. PLoS ONE 12(1): e0170277. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0170277

デザイン: 臨床試験
方法: 二種類のイラン産はちみつとジフェンヒドラミン(DPH)を比較
結果: はちみつはDPHよりも咳の改善に効果的であり、特にはちみつタイプ1がすべての咳の側面で優れていました。
これらの研究は、はちみつが子供の咳に対して一般的な鎮咳薬よりも効果的である可能性があることを示しています。

はちみつと咳の基礎研究

Identification of a New Pyrrolyl Pyridoindole Alkaloid, Melpyrrole, and Flazin from Honey and Their Cough-Suppressing Effect in Guinea Pigs
Hiroko Tani, et al: J. Agric. Food Chem. 2023, 71, 37, 13805–13813
https://doi.org/10.1021/acs.jafc.3c03864

山田養蜂場 健康科学研究所の理化学研究所と東京理科大学 薬学部の共同研究のようで、蜂蜜の鎮咳成分として新規化合物「メルピロール」を発見し、同成分が鎮咳薬「デキストロメトルファン(以下DM)」に匹敵する鎮咳効果を持つことを世界で初めて確認したとのことです。

要約です。

●活性のある蜂蜜画分に多く含まれる成分を調べた結果、2つの成分を発見した。活性成分のうち、1つは「フラジン」、もう一方は新規化合物であることが分かった。その新規化合物を、「メルピロール」と名づけ、化学合成にも成功しました。

●咳誘発モデルを用いた試験において、鎮咳活性を調べたところ、メルピロールとフラジンを投与した群は、水を投与した群に比べて咳の回数が有意に減少し、その活性の強さは鎮咳薬(DM)に匹敵するものでした。


はちみつまとめ

いくつかの論文を紹介しました。今後も研究は必要そうですが、蜂蜜が咳や上気道感染症の治療に有効であることや1歳以上の⼦どもに与えるのに⼀般的で安全で、はちみつに咳止めの効果はありそうです。はちみつの種類はアカシアを使用してる論文が多かったです。

はちみつが咳止めよりも、効果があるとするとただの風邪であれば医者にかかる必要はなくなりますね。ただし、咳の中には肺炎、喘息、アレルギー、結核、肺癌、副鼻腔炎、食道炎、心因性など様々は原因で起きますので、なにかしらの懸念がある場合は受診が望ましいでしょう。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士

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