インフルエンザウイルス感染症は診断して発症48時間以内であれば症状を早く治す薬が使用可能です。
インフルエンザとは
インフルエンザ感染症については、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。特に冬季に流行しやすく、日本では毎年約1千万人が感染しています。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類があり、特にA型が大規模な流行を引き起こすことが多いです。一般的な風邪と比べて、インフルエンザは高熱、咳、筋肉痛、鼻水、咽頭痛などの全身症状が強く現れます。
インフルエンザの潜伏期間、感染力、軽快後の通学時期
潜伏期間と感染力インフルエンザの潜伏期間は通常約2日ですが、1~4日の範囲であることもあります。感染力が最も強いのは、症状が出る1日前から発病後3~4日間です。特に幼い子供や免疫力が低下している人々は、さらに長期間にわたって他の人に感染させる可能性があります。軽快後の通学ですが、学校保健安全法で出席停止期間が定められています。小学生以上の場合は「発症したあと5日かつ解熱後2日経過するまで」、未就学児(幼児)の場合は「発症したあと5日かつ解熱後3日経過するまで」になります。
インフルエンザの検査時期
診断と抗原検査インフルエンザの診断には、迅速抗原検査が一般的に用いられます。この検査は、インフルエンザウイルスの抗原を検出することで、短時間で結果が得られるため、早期診断に役立ちます。抗原検査は、症状が出始めてから48時間以内に行うのが一般的です。これは、ウイルスの量が最も多く、検出しやすい時期であることもそうですがインフルエンザ治療薬も48時間以内に投与した方が望ましいからです。
では検査をする時期はいつが適切でしょうか。下の表は発症時間がインフルエンザ抗原迅速検査に与える影響の表になります。
時間帯 | インフルエンザ患者 全体の感度 (n=313) | 37.8度以上の発熱、 咳または咽頭痛のある インフルエンザ患者 の感度 (n=136) |
---|---|---|
12時間未満 | 38.90% | 50% |
12~24時間 | 40.50% | 60.90% |
24~48時間 | 65.20% | 74.20% |
48時間以降 | 69.60% | 75% |
全体 | 54.30% | 67.90% |
引用改変: 発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に与える影響:前向き観察研究、明石 祐作ら、筑波メディカルセンター病院感染症内科
この研究ではインフルエンザ様症状(発熱、咳もしくは咽頭痛)がある症例は時間がたっても感度上昇が有意でないと結果がでてますが、結論は時間経過で感度が上昇する可能性があるので1日待って検査したほうがいいという結論になっています。24時間経過すると感度が25%あがります。
インフルエンザの予防と治療
インフルエンザの予防には、毎年のワクチン接種が有効で、ワクチンは死亡率を低下し、感染の発症を防ぐ効果があります(感染しないわけではありません)。治療には、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)が用いられ、早期に投与することで症状の軽減が期待できます。
まとめ
抗原検査の感度は高いわけではなく、偽陰性(インフルエンザにかかっているけれども検査結果は陰性にでてしまっている)の可能性があるため、結果の解釈には注意が必要です。検査は陰性でも周りにうつさないように配慮は必要となります。検査の実施時期としては、発症から24時間以上経過したタイミングが検査タイミングとしてはよさそうです。しかし、高熱で体調がすぐれない場合に受診を妨げるものではないと思われます。
書いた人
石井優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
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