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結局コロナの抗原検査はいつするの?ー五類感染症になった現在、オミクロン株以降のエビデンス

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が原因となります。変異をくりかえし、アルファ株、デルタ株、オミクロン株と置き換わりながら流行していきました。SARS-CoV-2は現在でも変異を続けており、オミクロン株の派生株のJN.1株・KP.3株が広がっています。性質も変化を認めオミクロン株の登場以降、オミクロン株は発症が早くなった、感染力が上がった、毒性が下がった、抗原検査の感度がさがったなど様々な報告があります。オミクロン株以降の感染力やウイルス量の推移や症状の変化により、検査のタイミングや方法についても再考が求められています。COVID-19の研究はデルタ株以前の研究がほとんどです。本コラムでは、変異・派生を続けるオミクロン株以降のCOVID-19における抗原検査についてと、その結果を踏まえた適切な検査時期の選定を現在の研究結果を交えながら解説します。

1. オミクロン株の特徴と症状

オミクロン株は、従来の新型コロナウイルス株と比較して、感染力が高く、潜伏期間が短いことが特徴です。具体的には、潜伏期間の中央値は約2~3日であり、従来のウイルスよりも短くなっています。症状としては、のどの痛みや鼻づまり、鼻水、せき、くしゃみといった呼吸器症状が多く見られ、頭痛や倦怠感、発熱などの全身症状も報告されています。下記は2024年3月に改訂された新型コロナ感染症診療の手引き 第10.1版の新型コロナ感染症の臨床経過です。

引用:新型コロナ感染症診療の手引き 第10.1版(最終)

2. 抗原検査とPCR検査の違い

抗原検査とPCR検査は、COVID-19の診断において主要な役割を果たしています。

コロナ抗原検査

抗原検査とは、SARS-CoV-2ウイルスの表面にあるタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。患者の検体(通常は鼻腔からの拭い液)中のウイルス抗原を特異的な抗体と反応させて検出します。ウイルス抗原が多ければ多いほど、検査で陽性となる可能性が高くなります。

抗原検査は迅速で安価なため、頻繁に行うことが可能ですが、感度がPCR検査に比べて低いことが指摘されています。感度が低いと感染しているのに感染していないと判定がでる偽陰性になります。二回行うとほぼ取りこぼしが少ないと報告する論文もありますが、どちらにしても感染させない意識は重要です。

コロナ抗原検査とウイルス量

抗原検査の感度(陽性を正しく検出できる確率)は、ウイルス量が多いほど高くなります。
したがって、抗原検査の精度はウイルス量に大きく依存しています。ウイルス量が多い時期に実施すれば感度が高まりますが、ウイルス量が少ない時期には偽陰(感染しているのに陰性と出る)性のリスクが高くなります。症状や感染経過を考慮して、適切なタイミングで検査を実施することが重要です。確実に陽性の結果を得るには高いウイルス量(通常> 10 ⁵ コピー/mL)が必要といわれています。

下記の図は厚生労働省のホームページに記載されている国立感染症研究所のデータになります。

ウイルス量は4日がピークであるとする海外の論文があります。オミクロンでの研究を下に紹介します。

コロナ PCR検査

PCR検査は抗原検査よりも高感度で単一検査ではゴールドスタンダートいわれます。しかし、取りこぼしがあるので、検査陰性でも感染させない意識が必要です。デメリットは時間がかかるのとウイルスの死骸なども検出してしまうため、現在感染していないのに陽性となることが指摘されています。日本だとCT値(DNAの増幅回数、増幅回数が高いと検出率があがる)を高く設定されているのでウイルスの死骸も検出されやすいです。

オミクロン株前のCOVID-19抗原検査の感度と特異度の臨床研究

前向きコホート研究で2021年1月から5月にかけて、カリフォルニア州サンディエゴ郡とコロラド州デンバー都市圏で225人を対象に行われ、感染期間中の1日当たりの陽性率は、RT-PCR検査では95%(発症後3日)、抗原検査では77%(発症後4日)、1~2日後に再度検査する必要があることが示唆されました。当日の抗原検査の感度は低くなっています。

引用:Chu VT, et al. COVID-19 Household Transmission Team. Comparison of Home Antigen Testing With RT-PCR and Viral Culture During the Course of SARS-CoV-2 Infection. JAMA Intern Med. 2022 Jul 1;182(7):701-709. doi: 10.1001/jamainternmed.2022.1827. Erratum in: JAMA Intern Med. 2023 Jul 1;183(7):748. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.1683.

オミクロン株後のCOVID-19抗原検査の感度と特異度の臨床研究

オミクロン株後の論文になります。長いのでので読み飛ばしてもらった方がいいかもしれません。


大阪大学のオミクロン株流行下の研究

大阪大学の研究によると、オミクロン株流行下におをけるJリーグの選手やスタッフを対象にPCR検査と抗原定性検査の656件抗原定性検査を行い、PCRでCt 値 40 未満を陽性と判断された。PCR陽性の103例中71.8%は症状があった(無症状28.2%)。感度は63%、特異度は99.8%でした。この研究では、スタッフや選手に検体をとってもらい、PCR検査と抗原定性検査を同一日に行い、その結果を比較しました。結果として、抗原定性検査はPCR検査に比べて感度が低いものの、特異度は非常に高いことが示されました。

引用:Murakami M, et al. Sensitivity of rapid antigen tests for COVID-19 during the Omicron variant outbreak among players and staff members of the Japan Professional Football League and clubs: a retrospective observational studyBMJ Open 2023;13:e067591. doi: 10.1136/bmjopen-2022-067591


イングランドのオミクロン流行期の前向き研究

2022年6月から12月にかけて、イングランドの18のプライマリケア診療所で感染を疑う887人のうち、151人がPCR陽性。コロナの抗原検査感度は80.8%、特異度98.9%でしたコロナを検出する感度は、rtRT-PCRサイクル閾値(Ct)>30で急激に低下しました。

引用:Fanshawe TR, et al. Diagnostic accuracy of a point-of-care antigen test for SARS-CoV-2 and influenza in a primary care population (RAPTOR-C19). Clin Microbiol Infect. 2024 Mar;30(3):380-386. DOI: 10.1016/j.cmi.2023.12.009


シンガポールのオミクロンBA.2、BA.5およびXBB.1の優勢期間中におけるCOVID-19迅速抗原検査後ろ向き研究

2022年5月9日から2022年11月21日までにシンガポールの11の総合診療所で咳、鼻水、咽頭痛、発熱などの急性呼吸器症状を呈する個人が無作為に選ばれ、担当医から監視プログラムへの参加を勧められました。抗原検査およびRT-PCRで検査されたシンガポールの住民を対象とし、3519件PCRでSARS-CoV-2陽性であり、抗原検査との比較での全体的な感度84.6%、特異度99.4%でした。CT値≤25以下では感度高く、陽性率は2~3日で一番高い結果。

引用:Tan CY, Zeng K, Cui L, Lin RTP, Chen M. Diagnostic performance of rapid antigen tests (RAT) for COVID-19 and factors associated with RAT-negative results among RT-PCR-positive individuals during Omicron BA.2, BA.5 and XBB.1 predominance. BMC Infect Dis. 2024 May 21;24(1):504. doi: 10.1186/s12879-024-09408-8.


イタリアのオミクロン波とデルタ波の抗原感度比較の研究


2021年10月1日から2022年1月15日まで(デルタ波)、2つ目は、オミクロンが優勢だった2022年1月16日から2022年7月15日まで(オミクロン波)を比較して感度が63.5%から33.3%に低下したと報告しています。しかし、無症状も含まれ、症状の有無の記載はないです。
61人の患者から鼻腔と口腔のスワブサンプルを採取し、ウイルス量を比較しました。
オミクロン株感染では、口腔よりも鼻腔のほうが有意に高いウイルス量を示し、鼻検体で2日目にピークが来ています。

引用:Piubelli C, et al. Wide Real-Life Data Support Reduced Sensitivity of Antigen Tests for Omicron SARS-CoV-2 Infections. Viruses. 2024 Apr 23;16(5):657. doi: 10.3390/v16050657.


アメリカのオミクロン株が含まれる臨床研究ー無症状と症状のあるCOVID-19に対する抗原検査の評価ー

オミクロンとデルタ株が混ざっているアメリカの研究ですが参加者が抗原検査とPCR検査を48時間ごとに15日間おこなわれました。154人がPCR陽性となり、97 人は症状がなく、57 人は感染開始時に症状がありました。症状のある患者は1回の抗原検査の感度が59.6%、48時間間隔で2回の抗原検査は感度が92.2%、48時間間隔で3回の抗原検査は感度が93.6%でした。時間をおいて2回抗原検査を行うと感度が上昇します。無症候性では感度は低値です。

Soni A, et al. Performance of Rapid Antigen Tests to Detect Symptomatic and Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection : A Prospective Cohort Study. Ann Intern Med. 2023 Jul;176(7):975-982. doi: 10.7326/M23-0385. Epub 2023 Jul 4.


アメリカのオミクロン株での検体の種類によるウイルス量の違いの研究

参加者は、最近感染した、または曝露した家庭内接触者がいる場合、自宅でANS(鼻腔) 抗原検査を前向きに実施しました。参加者はまた、SARS-CoV-2検査とウイルス量定量化のために、SA(唾液)、ANS、OPS(口腔咽頭)検体を毎日収集しました。鼻腔抗原検査は感染者の検出率で、横断的分析では感染者の44%。コロナ感染陽患者90人のうち感染後期(登録期間中のウイルス量がすべての検体で10⁶コピー/mL未満だった、抗体陽性、登録日に検査陽性だった)と病期を判断できない73人を除外した17人。感染過程の早い段階でサンプル採取を開始した17人のコホートを特定し連日検査を行った経緯の表になります。感染初期の縦断的コホートでは、抗原検査 の臨床感度は非常に低い (3% 未満) 。鼻と咽頭を組み合わせた検体タイプを使用することで検出率が上がる可能性が報告されています。

引用:Viloria Winnett A, et al. Daily SARS-CoV-2 Nasal Antigen Tests Miss Infected and Presumably Infectious People Due to Viral Load Differences among Specimen Types. Microbiol Spectr. 2023 Aug 17;11(4):e0129523. doi: 10.1128/spectrum.01295-23. Epub 2023 Jun 14.


筑波医療センターのオミクロンの前向き臨床研究

筑波医療センターでオミクロン株が流行している時期(2021年12月28日から2022年2月16日)に、QuickNavi-COVID19 Ag迅速抗原検査キットを使用して感度特異度を調べた研究です。症状があって紹介・コロナ患者と接触した無症状患者で紹介となり検査をした1073人のうちPCR陽性417人(無症状例は7%)を抗原検査と比較。
全体の感度は94.2%(症状あり94.3%)、特異度は99.5%でした。症状の発症からサンプル収集までの期間の中央値は2日(四分位範囲:1〜3日)。
ウイルス量が多い検体(Ct値<25)では感度が高く、ウイルス量が少ない検体(Ct値≥30)では感度が47.4%に低下しました。


発症した0日目の検査は少なく、1日目と2日目に多く検査が行われていた。症状発症から採取までの日数が長くなるほど、陽性率が低下する傾向があります。解析された検体の85.9%がオミクロン株BA.1系統、12.4%がBA.2系統でした。QuickNavi-COVID19 Ag検査はオミクロン株BA.1とBA.2の検出に十分な診断性能を示しましたが、主に有症状患者で評価されたため、無症状患者への適用には注意が必要です。

引用:Suzuki H, et al. Analytical performance of the rapid qualitative antigen kit for the detection of SARS-CoV-2 during widespread circulation of the Omicron variant. J Infect Chemother. 2023 Mar;29(3):257-262.  DOI: 10.1016/j.jiac.2022.11.006


感染症の拡大を抑えるモデルの提案

コロラド大学のコンピューターサイエンス学部の論文です。検査と診断後の隔離によって感染症の拡大がどの程度減少するかを定量化してます。検査特性、使用法、感染者の行動を考慮して、有効性を推定するモデルを構築しました。呼吸器系のウイルス(RSV、インフルエンザA型、SARS-CoV-2)の検査戦略を比較して、症状発生後すぐの迅速検査がインフルエンザA型やRSVには有効だが、オミクロン株には2日遅らせた方が効果的と報告しています。

引用:Middleton C, Larremore DB. Modeling the Transmission Mitigation Impact of Testing for Infectious Diseases. medRxiv [Preprint]. 2024 Mar 5:2023.09.22.23295983. Update in: Sci Adv. 2024 Jun 14;10(24):eadk5108. doi: 10.1126/sciadv.adk5108.

2024/12/3追記の論文になります。


オミクロン株後の検査のタイミング

オミクロン株後の抗原検査の感度は33~94%(無症状例もあり)ばらつきがありますが、症状があって診療所に受診した研究では81~94%の感度がありました。2日目にCT値が低く、感度最も高くなっている論文が散見されるます。イタリアの研究を見ると、0日目はCT値が低いため、0日目はウイルス量が少なく感度が低いため、症状初期はウイルス量がすくなく検査が陰性になる可能性は否定できません。しかし、シンガポールや筑波の抗原検査の発症1日以内の感度も高いので、発症早期の検査も許容されそうです(0日目の検査についてはサンプルが少なく研究が望まれます)。抗原検査を行って陰性であっても、48時間後に再度行うとよいでしょう(こちらはアメリカのFDA、CDCが推奨)。症状がなく再検査をしない場合は他の人の感染させないような配慮が望ましいと思われます。感度が下がるので症状が出現してから5日以内に検査を行いましょう。

コロナに感染したら

5類感染症であり、以前のような強制力はありませんが、学校などは発症日を0日目として5日間は外出を控えることが推奨されます。無症状の場合は検体採取日を0日目とします。5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快してから24時間程度経過するまでは外出を控えることとされます。
また、周りの方への配慮として10日間経過するまでは、ウイルス排出している可能性がある、マスクを着用
し、高齢者などのハイリスク者との接触を控えるなど、周りの方へ感染させないよう配慮しましょう。

まとめ

抗原検査はオミクロン株後の抗原検査の感度は33~94%(無症状例もあり)ばらつきがありますが、症状があって診療所に受診した研究では81~94%の感度がありました。今回の論文では感度が最も高いのは2日目が多かったです。症状初期はウイルス量がすくなく検査が陰性になる可能性は否定できませんが、研究によっては、発症1日以内の感度も高いので、症状があれば早期の検査も許容されるかもしれません(0日目の検査についてはサンプルが少なく研究が望まれます)。抗原検査を行って陰性であっても、48時間後に再度行うとよいでしょう。感度が上昇します。症状がなく再検査をしない場合は他の人に感染させないような配慮が望ましいと思われます。感度が下がるので症状が出現してから5日以内に検査を行いましょう。リスクや症状のつらい方は高価ですが保険適応のコロナの薬もあります。周りに感染させないためにも診断と感染させない意識を心がけましょう。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士

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