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はじめに
皆さんは運動やスポーツをしていますか? 院長も私もテニスをします。都内だと場所を探すのも大変です。しかし、テニスをすると爽快ですし、笑いも生まれます。動けるうちはテニスを続けたいと思います。寿命が延びると聞くとなおさらです(“⌒∇⌒”)皆さんもこのコラムを読んで自分のしているスポーツがどのような影響があるか知っていただければ幸いです。
さて、近年健康寿命という言葉が注目されています。健康寿命とは、心身ともに健康で、日常生活に制限がなく自立して過ごせる期間のことを指します。平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限がある期間を意味し、健康寿命を延ばすことが重要です。運動は健康寿命を延ばすための重要な要素であり、特定のスポーツが寿命延長に寄与することが研究で示されています。本コラムでは、以前発表された論文と最近発表された論文を取り上げて寿命が延びるスポーツについて詳しく探ります。
健康寿命を延ばすための運動の重要性
運動は、生活習慣病の予防や転倒・骨折の防止に役立ち、健康寿命を延ばすために欠かせない要素です。
中等度の有酸素運動(軽く息がはずむ程度)を20~60分、週に3~5回以上行うことが推奨されています。ウォーキングやジョギング、水泳などが有酸素運動の例として挙げられます。また、レジスタンス運動(筋力トレーニング)も重要で、週に2~3回、各運動を10~15回を1セットとし、徐々にセット数を増やしていくことが推奨されています。
厚生労働省の健康日本 21では、65 歳以上の方の 1 日当たりの歩数の目標は男性 7000 歩、女性 6000 歩とされていました。
日常生活での身体活動の増加
日常生活における身体活動も健康寿命を延ばすために重要です。家事や通勤・通学などの「生活活動」と、スポーツやトレーニングなどの「運動」を組み合わせることで、身体活動量を増やすことができます。例えば、掃除や買い物の際に少し遠回りをする、階段を使うなどの工夫が効果的です。1 日に 11 時間以上座っている人は4 時間未満の人と比べ死亡リスクが40%も高まるともいわれています。長時間座り続けることを避け、30分ごとに3分程度、少なくとも1時間に5分程度は立ち上がって体を動かすことが推奨されています。
以前に発表された寿命が延びるスポーツの具体例
コペンハーゲン市心臓研究 (CCHS) は、参加者がさまざまなスポーツや余暇の身体活動に関する質問に回答する前向き人口調査です。この研究には、1991年10月10日から1994年9月16日までに検査を受けた8,577人が参加しました。参加者は2017年3月22日まで、最大25年間にわたり全死因による死亡率が追跡されています。
引用:Various Leisure-Time Physical Activities Associated With Widely Divergent Life Expectancies: The Copenhagen City Heart StudyPeter Schnohr, MD, et.al. Published:September 04, 2018DOI:https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2018.06.025

テニス
デンマークと米国の研究チームが行った25年間の追跡調査によると、テニスは寿命を最も延ばすスポーツであり、平均で9.7年の寿命延長が見られました。この研究では、テニスをする人々が他のスポーツをする人々よりも長生きする傾向があることが示されています。テニスは、社会的交流が多く、心身の健康に良い影響を与えると考えられています。
バドミントン
同じ研究で、バドミントンも寿命延長に寄与するスポーツとして挙げられ、平均で6.2年の寿命延長が見られました。バドミントンもテニス同様、社会的交流が多く、全身を使う運動であるため、健康に良い影響を与えると考えられます。
サッカー
サッカーも寿命延長に寄与するスポーツの一つであり、平均で4.7年の寿命延長が見られました。サッカーはチームスポーツであり、社会的交流が多く、心肺機能の向上や筋力の強化に役立ちます。
サイクリング
サイクリングは、平均で3.7年の寿命延長が見られるスポーツです。サイクリングは心肺機能の向上や筋力の強化に役立ち、屋外で行うため、自然との触れ合いも健康に良い影響を与えます。
水泳
水泳は、平均で3.4年の寿命延長が見られるスポーツです。水泳は全身を使う運動であり、関節に負担をかけずに行えるため、幅広い年齢層に適しています。
ジョギング
ジョギングは、平均で3.2年の寿命延長が見られるスポーツです。ジョギングは心肺機能の向上や体重管理に役立ち、手軽に始められる運動です。
最近発表された死亡リスク低下させるスポーツ
総計: 76の研究から136の論文がレビューに含まれ、260万の参加者が対象。
サイクリング
冠動脈心疾患のリスクを16%減少、全死亡率を21%減少、癌死亡率を10%減少、心血管死亡率を20%減少。
サッカー
体組成、血中脂質、空腹時血糖値、血圧、安静時の心血管機能、心肺機能、骨強度に有益な効果。
ハンドボール
体組成と心肺機能に有益な効果。
ランニング
全死亡率を23%減少、癌死亡率を20%減少、心血管死亡率を27%減少、体組成、安静時の心血管機能、心肺機能を改善。
スイミング
全死亡率を24%減少、体組成と血中脂質を改善。
ポイント
〇サイクリング、ランニング、スイミングは全死亡率をそれぞれ21%、23%、24%減少させる。
〇ランニングは体組成、安静時の心血管機能、心肺機能を改善。
〇サッカーは体組成、血中脂質、空腹時血糖値、血圧、安静時の心血管機能、心肺機能、骨強度を改善。
〇ハンドボールは体組成と心肺機能を改善。
この論文でサイクリング、サッカー、ハンドボール、ランニング、スイミングなど、さまざまな身体的健康効果をもたらすことが確認されました。
引用:Oja P, et al. Health Benefits of Different Sports: a Systematic Review and Meta-Analysis of Longitudinal and Intervention Studies Including 2.6 Million Adult Participants. Sports Med Open. 2024 Apr 24;10(1):46. doi: 10.1186/s40798-024-00692-x. PMID: 38658416; PMCID: PMC11043276.
運動の継続と安全性
運動を継続することが健康寿命を延ばすために重要です。初めから無理をせず、自分の体調に合わせて楽しく行える運動を選び、1か月後、半年後、1年後と継続していきましょう。また、運動を行う際には、身体に痛みがあるときや体調が悪いときは無理をせず、合併症のある人は医師に相談してから行うようにしましょう。無理をして転んで骨折してしまっては活動が低下してしまいます。自分に会った運動を安全に行うことが重要です。
結論
寿命を延ばすためには、運動が欠かせません。特に、テニスは9.7年、バドミントンは6.2年、サッカーは4.7年の寿命延長に寄与することが以前の研究で示されています。今回システマティックレビューとメタアナリシスにてサイクリング、ランニング、スイミングは全死亡率をそれぞれ21%、23%、24%減少させることが発表されました。日常生活での身体活動を増やし、適度な運動を継続することで、健康寿命を延ばし、心身ともに健康で長生きすることが可能です。自分に合った運動を見つけ、楽しく続けることが健康寿命を延ばす鍵となると思われます。
書いた人
石井優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
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