目次
はじめに
検診で悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高いと言われてドキッとしたことはありますか?家族でコレステロールが高いと言われている方もいるのではないでしょうか。
実は身近な製品が悪玉コレステロールを低下させます。それだけではなく、死亡率を低下させるとも言われているのです。
乳製品の報告はたくさんありますが、今回はヨーグルトにしぼっています。いろいろな本やサイトでヨーグルトの効果や摂取量など異なっていて何が正解かわからないですよね。現在わかっているヨーグルトの効果や摂取量、悪玉コレステロールとヨーグルトについて含めてお話しします。
要点だけ知りたいかたは太字やまとめを読んでください。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)
悪玉コレステロールが増えると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がるといわれています。では悪玉コレステロールがあがる原因は何でしょうか。悪玉コレステロール増加の原因は遺伝性のこともありますが、飽和脂肪酸の摂取量増加が一因と言われています。飽和脂肪酸とは、肉の脂やバターなどの一般的に冷蔵庫で固まる油脂で、飽和脂肪酸を多く含んでいます。不飽和脂肪酸は魚の油やサラダ油が多く含まれていることが多いです。過剰摂取している場合は飽和脂肪酸の摂取量を減らしすことにより悪玉コレステロールを下げることができます。
ヨーグルトと効果
ヨーグルトは世界中で愛される発酵乳製品です。私の子供も、毎日食べています。ヨーグルトのついては色々な報告がされています。システマティックレビュー(エビデンスの高い論文)では、腸内環境をよくすることによる下痢や便秘などの便通の改善、感染症予防や花粉症などの免疫への効果、糖尿病リスクの低下、不安症状を和らげる効果、高血圧の改善、悪玉コレステロールの低下、乳がんと大腸癌のリスク低下?、乳糖不耐症の改善、骨密度の増加など報告されています。
ただし、エビデンスの高い論文でも効果があるなしが、わかれているのが現状です。
引用:Savaiano DA, Hutkins RW. Yogurt, cultured fermented milk, and health: a systematic review. Nutr Rev. 2021 Apr 7;79(5):599-614. doi: 10.1093/nutrit/nuaa013. PMID: 32447398; PMCID: PMC8579104.
ヨーグルト摂取のメリット
ヨーグルトによる悪玉コレステロール減少
Pourrajabらのシステマティックレビューとメタアナリシスでは、ヨーグルトの摂取によりLDLコレステロールをが有意に低下していました。この研究では、7つのランダム化比較試験(RCT)を対象に、合計274人の参加者を分析しています。ヨーグルトの摂取により、LDLコレステロールが平均で10.611 mg/dL減少したことが報告されています。
引用:Behnaz Pourrajab, et al. The impact of probiotic yogurt consumption on lipid profiles in subjects with mild to moderate hypercholesterolemia: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials,Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases,Volume 30, Issue 1,
ヨーグルトによる全死亡リスク低下
下記のシステマティックレビューでは、ヨーグルト摂取と全死因リスクとの関連が検討されています。12件のコホート研究 ヨーグルトの最高摂取量と最低摂取量を比較して、全死亡率の相対リスクは 0.93 (95 % 信頼区間: 0.89、0.98) であり、ヨーグルト摂取が全死亡率低下に有意な効果があることが示されています。
ヨーグルトによる心血管イベントリスク低下
同様の研究でヨーグルト摂取と心血管疾患の死亡リスクの関連も検討されています。ヨーグルト摂取と心血管疾患による死亡率の関連を分析した11のコホート研究で、ヨーグルトの最高摂取量と最低摂取量を比較して、死亡率の相対リスク(RR)は0.89(95%信頼区間: 0.81~0.98)であり、有意に心血管の死亡率低下に関係していました。
ヨーグルトによる乳糖不耐症改善
Savaiano のシステマティックレビューによると、ヨーグルト摂取は乳糖不耐症の症状を改善することが示されています。ヨーグルト中の乳酸菌が乳糖を分解するためと考えられています。
ヨーグルトによる整腸作用
Savaianoらの研究では、ヨーグルトに含まれるプロバイオティクス(生きた乳酸菌)が腸内環境を改善し、便通を良くすることが報告されています。
ヨーグルト摂取のデメリット
ヨーグルトのメリットの報告は驚く内容が多かったと思いますが、一方で、ヨーグルトの摂取にはいくつかのデメリットも指摘されています。砂糖のはいったヨーグルトが問題になります。市販のヨーグルトの中には、砂糖が多量に添加されているものがあります。WHOは、総エネルギー摂取量の10%未満を砂糖由来とすることを推奨していますが、一部の加糖ヨーグルトではこの基準を超えてしまう可能性があり、注意が必要です。過剰な砂糖摂取は肥満や生活習慣病などのリスクを高めてしまいます。また、一部の人では、ヨーグルトに含まれる乳タンパク質に対するアレルギー反応が起こる可能性があり、吐き気、嘔吐、下痢などを引き起こす可能性があります。
ヨーグルトのがんリスクについて
Savaianoらの研究によると、ヨーグルト摂取は乳がんや大腸がんのリスクを下げる可能性が示唆されています。しかし、前立腺がんに関してはヨーグルトを含む乳製品全般の摂取と関連があるという報告もあり、今後さらなる検討が必要と思われます。
ヨーグルト摂取量の関係
この研究ではヨーグルトの摂取量は、米国農務省が開発した標準的な分量(1食分=244g)に基づいて1日あたりの摂取量に換算しています。
ヨーグルトの摂取量と全死亡率
ヨーグルトの摂取と全死亡率との関連しらべた11の研究を使って、用量反応分析(量が増えると効果がどうなるか)をしました。ヨーグルトの 1 日あたりの摂取量が 1 食分増えるごとに、全死亡リスクと逆相関していました ( RR: 0.93、95 % CI: 0.86、0.99、I 2 = 63.3 %) 。これは、ヨーグルトの消費が増えると死亡リスクが下がることを意味します。
ヨーグルト摂取量と全死亡率には非線形相関が認められ(P<0.001)、0.5食分/日を超えてもリスクはそれ以上低下しませんでした。
つまり、ヨーグルトの摂取量が増えると死亡リスクが下がるという関係は、一定の摂取量までです。この研究では、0.5食分/日を超える摂取量では、リスクのさらなる低下は認められなかったと報告されています。これは、ヨーグルトをある程度以上食べても、それ以上の健康効果は期待できないということです。
ヨーグルトの摂取量と心血管疾患の死亡率
ヨーグルト摂取量と心血管疾患の死亡率の関係をしらべた研究での容量反応分析では、ヨーグルト摂取量が1日1食増えるごとに、心血管疾患の死亡リスクが14 %低下しました(相対リスク:0.86、95 % 信頼区間:0.77、0.97、I 2 = 36.6 %)。しかし、線形性からの逸脱があり、0.5食/日を超えてもリスクのさらなる低下は見られませんでした。
これは同様に、ヨーグルトの摂取量が増えると心血管疾患の死亡リスクが下がるという関係は、一定の摂取量までです。この研究では、0.5食分/日を超える摂取量では、リスクのさらなる低下は認められなかったと報告されています。
ヨーグルトの摂取とがんによる死亡リスクとの関連では、ヨーグルト摂取量の増加は、がん死亡率と関連していませんでした(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.85、1.07、I 2 = 53.3%)。
引用:Tutunchi H, et al. Yogurt consumption and risk of mortality from all causes, CVD and cancer: a comprehensive systematic review and dose–response meta-analysis of cohort studies. Public Health Nutrition. 2023;26(6):1196-1209. doi:10.1017/S1368980022002385
まとめ
ヨーグルトは様々な有用な効果がありそうです。全死亡率低下、心血管イベントの死亡率低下、整腸作用、糖尿病リスクの低下、不安症状を和らげる効果、高血圧の改善、悪玉コレステロールの低下、乳糖不耐症の改善、骨密度の増加など。ヨーグルトは一日122g/日の摂取がよさそうです。小さなカップなら1~2カップ、大きなカップなら三分の一程度でしょうか。ヨーグルトの過剰な摂取をしなければ私達の体にとても有効であると思われます。

書いた人
石井 優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
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