都内で気温が上がってきました。温度と湿度が上がると熱中症のリスクが上がります。2023年5~9月は熱中症の搬送患者が91467人と調査開始史上2番目に多かったようです。毎年1000人以上の死亡を認め、健康被害に配慮し、2024年4月より熱中症警戒アラートの基準が下げられています。熱中症警戒アラートの評価には暑さ指数(WBGT)が使われます。今年も暑いことが予想されますので熱中症の予防を始めましょう。私も夏場に運動する際には熱中症にならないように日陰にはいったり、水分と塩分などのミネラルをとるようにしています。
2024/7/29追記:熱中症診療ガイドライン2024が改定になったので今回追記を行っています。
熱中症とは
暑い環境や運動により体温が上がったときに、普通は汗や皮膚の血管拡張で体温を下げますが、脱水や多湿により体温調節機能が破綻し、体温が上昇した状態です。
熱中症の種類と注意点
軽症、中等症、重症にわかれています。意識が悪くない、めまいや立ちくらみ、こむらがえり、大量の発汗などは軽症。頭痛・嘔吐・倦怠感・判断力の低下は中等症であり、医療機関の受診が必要です。呼びかけに応じなかったり、反応がおかしいときは重症なので救急車を呼びましょう。また、重症でなくても水分や塩分をとって体を冷やしても症状が改善しない場合は医療機関を受診するようにしましょう。
今回の熱中症診療ガイドライン2024では重症はⅢ度とⅣ度にわけられました。また、表面体温だけでも、迅速に対応するきっかけとなるように qⅣ度も併せて提唱されています。
Ⅳ度 深部体温 40.0℃以上かつ GCS≦8、Ⅲ度(2024) Ⅳ度に該当しないⅢ度(2015)。qⅣ度 表面体温 40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつ GCS ≦8(もしくは JCS ≧100)。
上記は医師の利用する重症度分類なので体温が40度あって、意識が悪かったら重症なので救急車を呼ぶレベルだと必要と思っていただいて大丈夫です。
軽症・中等症は水分や電解質をとって、涼しいところで休んでも改善がなければ、積極的に体温を下げる(局所冷却や霧吹きをして扇風機など)方法が推奨されます。解熱剤は推奨されませんので使わないようにしましょう。
熱中症対策
水分補給
適切な水分補給は熱中症予防に重要です。
・こまめな水分摂取: のどが渇く前に水分を摂取します。
・適切な飲料の選択: 水だけでなく、スポーツドリンクなどの電解質(食塩0.1~0.2%)を含む飲料も適宜摂取します。OS-1などの経口補水液も有用です。スポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、糖分が少ない組成になっています。
・アルコールへの注意: アルコールは利尿作用があるため、脱水を促進する可能性があります。
環境調整
暑い環境を避けて、涼しい環境を作ることも重要です。
・室内環境の調整: エアコンや扇風機を使用し、室温を28℃以下、湿度を70%以下に保つよう努めます。この気温でも動く場合は注意が必要です。持病があれば室温26℃以下、湿度を50%以下が望ましいでしょう。室内で30℃、湿度75%以上になると熱中症が増えてきます。
・日陰の利用: 外出時は日陰を歩くなど、直射日光に長く当たらないように気を付けましょう。
・適切な服装服装: 通気性の良い素材、熱の吸収の少ない明るい色、帽子の着用も有効です。
暑熱順化(暑さに慣れる)
暑熱順化とは、熱ストレスに繰り返し曝露されることで熱耐性を向上させる過程のことです。熱中症診療ガイドライン2024に記載されました。エビデンスが高いわけではないですが、熱に慣れておくといいかもしれません。7-14 日間、運動したり、自身の状態に合わせて運動を調整したり、運動せずに一定期間暑熱環境下にさらされる方法がありますが、リスク高い人は無理しないほうがいいでしょう。
個人差
子供や高齢者は体温調節がうまく行かずに熱中症になりやすいです。適切な食事や十分な睡眠を心掛けましょう。持病があるかたや暑さが苦手なかたも暑さや水分補給に気を遣う必要があるでしょう。
肥満、運動不足、脱水、屋外労働、過度なスポーツ活動は労作性熱中症のリスクと考えられています。一部の薬や基礎疾患も熱中症のリスクとされます。
まとめ
日本救急医学会で熱中症診療ガイドライン2024年のガイドラインが改訂されました。しかし、私達がやることは変わりません。こまめな水分補給補給と温度と湿度調整などに気を使い、熱中症に気を付けましょう。今後も気温が高くなる可能性があり、心構えが必要でしょう。
書いた人
石井 優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
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