先日院長が大腸ポリープをとってもらいました。あと数年検査をしていなかったらと考えるととても怖いことです。今回は皆さんに大腸がんとそのリスク、大腸がん検診についてお話しします。
目次
大腸がんの疫学
大腸がんは2019年の罹患数(かかった人)が1位、2022年の死亡数が全がん種で2位(男性2位、女性1位)となっています。罹患数と死亡数は年々増えています。
大腸がんの症状
初期の大腸がんはほとんど症状がありませんが、進行すると血便、便が細くなる、腹痛、下痢や便秘、腹部がはってくるなどの症状が出ます。
大腸がん検査
大腸がんは早期発見・早期治療が可能ながんの一つです。検診を受けることで、大腸がんによる死亡リスクを大幅に減らすことができます。例えば、便潜血検査を毎年受けることで、大腸がんによる死亡リスクを33%も減らすことができると報告されています。
便鮮血反応
便潜血検査は、便に混じった血液を検出する検査です。特に免疫法による便潜血検査が推奨されています。この検査は低コストであり、検査自体に侵襲的なのリスクがありません。感度(がんである人陽性と判定できる確率)は30.0%から92.9%と報告されています。2日間の検査を行い、1日でも陽性になれば精密検査が推奨されます。進行がんであれば80~90%、早期がんは50%を発見できるといわれています。東京都の統計では便潜血反応の検査陽性で大腸カメラをした人で大腸癌は3.6%、大腸ポリープは34.7%、炎症性腸疾患が1.4%、痔が6.4%と報告されていました。
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)
大腸カメラは下剤の内服や内視鏡検査を受ける負担、低い確率ですが偶発症が起きることはありますが、大腸がんに対する感度が95%以上と報告されています。大腸カメラは大腸がんや大腸ポリープを見つけるのにとても有用で、アメリカのデータですが、大腸カメラにより大腸がんによる死亡リスクが61%低下したと報告されています。大腸カメラはとても有用ですが、症状があったり、便潜血反応陽性でないと保険で内視鏡を受けることはできません。そのため、保険適応でない人は人間ドックで大腸内視鏡をしているところで検査を行うことが必要になります。
50歳以下の早期発症大腸がんのリスク
システマティックレビュー(エビデンスレベルの高い研究を集めて解析したもの)では大腸がんのリスク要因は以下のように特定されています。
- 家族歴(大腸がんの家族歴がある場合)
- 炎症性腸疾患(IBD)
- 座りがちな生活習慣
- 喫煙
- アルコール摂取
- ジュース
- 肥満
- 西洋の食事パターン
- 赤身肉や加工肉の過剰摂取
- 2型糖尿病
- 高血圧
- 中性脂肪高値
大腸がん全体のリスクと近いものがありますが、これらのリスクがある方は注意をしましょう。
生活習慣と大腸がんリスクの関連
食事、喫煙、アルコール摂取、身体活動、肥満、睡眠時間などを組みあわせて、最も健康的な生活習慣を持つ人は最も不健康な生活習慣を持つ人と比べて大腸がんリスクが48%低下しており、健康的な生活習慣を1つ増やすごとに、大腸がんリスクが平均9%低下していました。
大腸がんと食事
日本の研究で男性は野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などのバランスのよい食事が大腸がんのリスクを下げ、女性は欧米様の食事が大腸がんのリスクをあげると報告されています。
アルコール摂取と大腸がんリスク
私たちが好きなアルコールも大腸がんリスクです。あるシステマティックレビューではアルコール摂取量が増えるほど、リスクが上昇すると報告しており、高摂取群(25g/日以上)は低~中程度の摂取群(0.1-25g/日)と比較してリスクが30%上昇すると報告しています。50歳未満発症の大腸がんではでリスクが39%上昇すると報告しており、お酒が好きな人は注意が必要です。
大腸がんのリスクを下げるために日々の生活でできること
生活習慣に伴うリスクが多いため、大腸がんリスクを低減するため、ストレスのない範囲で以下のこと気をつけることが望ましいと思います。
- 肥満の回避
- 適切な運動と睡眠
- バランスの取れた食事(赤身肉や加工肉を控え、果物、野菜、食物繊維を多く摂取)
- アルコール摂取の制限
- 禁煙
これらの生活習慣の改善は私たちが意識して改善することで、大腸がんのをリスクを下げます。また、平行して大腸がんの検査も行うようにしましょう。
書いた人
石井優
資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士
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