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医療豆知識

健康寿命をのばすために!高齢者の筋力低下を防ぎ、筋肉や筋力を増加させるエビデンスのある食材

はじめに

2023年の日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が81.09歳と程度の差はありますが以前より長くなっています。また、2019年の健康寿命(健康の問題で日常生活制限されない期間)は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。平均寿命とひらきがあり、健康寿命を延ばすことはとても重要です。健康寿命を延ばすためには食事、運動、社会参加が重要といわれます。今回は運動面! 高齢者の筋力低下を防ぎ、筋力を増加させる食事についてお話ししたいと思います。

筋力低下を防ぐのための食事

厚生労働省のサイトに3食しっかり、バランスのよい食事、色々な食品を食べるようにすすめられています。また、1日の総タンパク摂取量が体重kgあたり0.1g/日増加すると2~3か月で筋肉が0.39kgの増加が期待できます。しかし、体重1kgあたり1.3g/日をこえてくると筋量増加の効率が悪くなり、とりすぎは腎臓などの臓器の負担にもなってきます。身体活動量に応じたタンパク摂取が推奨されます。

筋肉量や筋力増加、筋力低下を防ぐエビデンスのある食材は?

では、実際にどのようなものが効果があるとわかっているのでしょうか? 2つ論文を紹介します。

〇Hiroyasu Mori, et al. Chronic Intake of a Meal Including Alaska Pollack Protein Increases Skeletal Muscle Mass and Strength in Healthy Older Women: A Double-Blind Randomized Controlled Trial, The Journal of Nutrition, Volume 152, Issue 12. https://doi.org/10.1093/jn/nxac219

「アラスカ産スケトウダラのタンパク質を含む食事の慢性的な摂取が健康な高齢女性の骨格筋量と筋力を増加させる:二重盲検ランダム化比較試験」になります。

スケトウダラ

アラスカ産スケトウダラタンパク質(APP)の摂取が高齢女性の骨格筋量と筋力に与える影響を調査した二重盲検ランダム化比較試験についての研究です。65歳以上の健康な女性92名を、APP群とホエイタンパク質対照(CON)群に無作為に分けます。参加者は24週間にわたり、毎日テストタンパク質食(1食あたり5.0-5.1gのタンパク質)を摂取。結果としてAPPを含む食事の毎日の摂取は、ホエイタンパク質と比較して、健康な高齢女性の骨格筋量と下肢筋力を増加させました。このことから、APPを含む食事はこサルコペニア予防に有用である可能性があります。

〇Granic A, et al. Myoprotective Whole Foods, Muscle Health and Sarcopenia: A Systematic Review of Observational and Intervention Studies in Older Adults. Nutrients. 2020 Jul 28;12(8):2257. doi: 10.3390/nu12082257.

「筋肉を保護する全食品、筋肉の健康、およびサルコペニア:高齢者における観察研究および介入研究のシステマティクレビュー」です。

こちらはシステマティクレビューというエビデンスレベルの強い論文を紹介します。50歳以上の成人において、筋肉の健康と筋力低下対する食事の影響を調査したものです。

加齢に伴い、骨格筋の強度と量が減少し、生活の質や健康に悪影響を及ぼすことがあります。これに対する食事の役割は非常に重要です。特に、特定の食品が筋肉の健康にどのように影響を与えるかを調査することが、この論文の目的となります。介入研究とは研究者が積極的に介入して信頼性の高いデータを得ます。観察研究は研究者が介入を行わず、自然に発生する現象や被験者の行動、環境を観察してデータを収集する研究です。

赤身の赤肉

観察研究と介入研究の両方で、筋肉量または除脂肪組織量に対する有益な効果が一貫して示されました。
例えば、Asp et al. (2012)の研究では、牛肉摂取量が上腕筋面積と正の相関を示し、1日約28gの牛肉摂取増加が上腕筋面積を2.3cm²増加させることが予測されました。
Morris & Jacques (2013)の研究では、非肥満で活発な運動を行う参加者において、牛肉摂取量の増加が四肢骨格筋指数の増加と関連していました。
しかし、Struijk et al. (2018)の研究では、加工肉の摂取量が多いほど敏捷性と下肢機能の低下リスクが高くなることが報告されています。

果物と野菜

観察研究では筋機能の改善との関連が見られましたが、介入研究は少なかったです。
Kim et al. (2015)の研究では、果物と野菜の摂取量が多い高齢男性はサルコペニアのリスクが低いことが示されました。

ヨーグルトやチーズ

観察研究と介入研究の両方で、筋肉量に対する有益な効果が示されました。
筋力とサルコペニアに対する効果については、中程度の証拠が得られています。

その他の食品(魚、卵など)

高齢者の筋肉の健康に対する利点については、限定的または結論が出ないエビデンスしか得られませんでした。

まとめ

筋力低下は我々の健康寿命を短くします。健康寿命を長くするためにも筋力が低下しないエビデンスのある食材を知っておくことは重要です。様々な論文化された研究をみると赤肉などのタンパク質やヨーグルトやチーズなどの非液体乳製品は筋力の低下を防ぐことに有用と思われます。また、野菜や果物も、加齢に伴う筋肉の健康を守るために重要であると可能性があります。スケトウダラも筋力の低下を防ぐ可能性があり、加工肉は筋力低下のリスクの可能性があります。より良い人生を送るために筋力低下を防ぐ食材を含めたバランスの良い食事をとるように心がけましょう。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士

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