注意が必要な症状、症状の原因、日常的にできる対処法など記載しています。

発熱
体温が通常よりも高くなる状態のことを言います。私たちの体は、脳の視床下部で体温調節中枢の働きで一定に保たれていますが、何らかの原因で体温調節の設定が高くなると発熱がおきます。風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症、肺炎などの各臓器への細菌感染症、膠原病(リウマチなど)などの自己免疫性疾患、甲状腺などのホルモンの異常、体に熱がこもる熱中症、リンパ腫などの悪性疾患、薬剤性、中枢性、川崎病などの小児の病気など多岐にわたります。細菌感染によって体の臓器に障害が出る敗血症になると死亡する可能性も出てきます。意識状態が悪い、血圧が低い、体の酸素濃度が低い、呼吸が早いなどの症状は早急な病院の受診が必要です。
咳・喘鳴
気道の異物を排出するための反射行動です。ウイルス感染や感染後の咳が多いです。咳は肺炎、喘息、慢性気管支炎、アレルギー、結核、肺癌、副鼻腔炎、食道炎、心因性など様々は原因で起きます。3週以内の急性咳嗽、4~7週の遷延性咳嗽、8週以上咳が続く慢性咳嗽に分類されます。急性の場合は感染性が多いですが、長引くものの中には精査が必要となる疾患もあります。
喘鳴とはゼーゼー・ヒューヒューする呼吸です。聴診器を使用しなくても聞こえます。気管支喘息・肺気腫や心不全、気管支炎、アデノイド・扁桃肥大や舌根沈下や感染・腫瘍などの喉の狭窄が原因のことがあります。ゼーゼー・ヒューヒューする強い呼吸困難や酸素濃度が低下しチアノーゼ(顔が青白い)がある場合では早急な病院の受診や救急要請が必要です。
のどの痛み
喉の炎症やウイルスや細菌感染による痛みであることがほとんどです。原因は咽頭炎、扁桃炎、リンパ節や甲状腺疾患、心臓の病気など。小児の場合は溶連菌感染の場合、リウマチ熱の予防のために抗菌薬加療が行われます。喉が痛くて唾が飲めずよだれがだらだらでる、息が苦しくてヒューヒューする、口が閉じにくい、意識が悪い場合は早急な病院受診が必要です。
呑酸・つかえ感・げっぷ
逆流性食道炎が原因のことが多いです。逆流性食道炎は胃酸の逆流による食道の粘膜障害で制酸薬によるコントロールが有用です。胃カメラによって診断が可能です。つかえ感の人の中には食道がんや心筋梗塞などの心疾患のこともあり注意が必要です。寝る前の食事や飲酒・脂っこい食事・コーヒーなどの刺激物・喫煙・肥満は逆流性食道炎を増悪する可能性があり、注意が必要です。ひどい場合は少し上半身を持ち上げて寝ると症状が楽になるといわれます。
胸痛・動悸
胸痛
胸痛は肺や心臓・大血管、食道、胃十二指腸、胆嚢、骨や筋肉、心理的な影響が原因として考えられます。胸痛は心筋梗塞、大動脈解離、肺動脈血栓症(エコノミー症候群)、緊張性気胸(脈が速く、血圧が下がるような気胸)などの命にかかわる疾患のことがあります。胸や背中の突然の激痛、胸が締め付けられて押されるような痛みが続く場合、急な息切れや呼吸困難、痛みの場所が移動する、意識が悪い場合には精査や加療ができる病院に早急に行くか救急車を呼ぶ必要があります。
動悸
動悸はドキドキしていると感じることです。不整脈や頻脈、血圧、心臓の動き、甲状腺の機能異常、更年期障害、低血糖、薬剤性、ストレス、睡眠不足や過労、心理的な影響が考えられます。
腹痛
腹痛に関係する痛みは内臓痛(腸管の進展・拡張・収縮による内圧の上昇により生じる痛み)、体性痛(炎症が腹膜に波及することに伴う痛み)、関連痛(疾患臓器から離れた場所で感じる痛み)、心因性(精神面から発生する痛み)に分類されます。持続的な痛みや歩くと響くなどの症状は腹膜炎などの重い状態になっていることが多く、重症になる前に早めの受診をおすすめします。
原因は部位により多岐にわたります。胃の部位が痛いと受診される方でも診断は心筋梗塞などの血管系、胃潰瘍や腸閉塞など消化管系、膵炎などの膵臓系、胆嚢炎などの胆道系、肝炎などの肝臓系など多数の疾患の方がいらっしゃいます。頻度としては胃腸炎や便秘などが多いですが、内臓だと思っていたら骨折だったり、帯状疱疹、腹壁の神経圧迫が原因であった方もいます。
腹部膨満感
おなかが張ったような症状です。腸管にガスがたまった便秘やおなかの動きが悪いことが原因となることが多く、排便のコントロールを行い、症状が改善することが多いです。腹痛を伴っていれば腸閉塞になっていることもあります。しかし、肝硬変や癌によって腹水がたまっていたり、腹部に大きな腫瘤がある状態のこともあります。
便通異常(便秘・下痢)
便秘
通常便は平滑で柔らかいソーセージ状の便が良いとされますが、便秘は固い便、排便回数減少や残便感、排便困難感を認める状態と定義されます。また、慢性の便秘は10~15%の人に認めるとされ、大腸の動きが悪くなり、肛門や直腸の機能や感覚の低下が原因となります。慢性的な便秘は生活の質や長期予後に影響を与える可能性があるため、コントロールが望まれます。
私たちが私生活でできることがあります。排便の姿勢は、背筋を伸ばし少し前かがみにすると良いとされますので意識しましょう。食生活でできることは食物繊維摂取が少ない人は増やすようにして下さい。日本人では、小麦よりも米や豆類の食事やヨーグルトなどの乳製品が有用と報告されています。キウイフルーツ、プルーン、オオバコも排便回数や便の形状正常化の有用性が報告されています。運動では有酸素運動や一日15分の腹壁マッサージが良いとする報告があります。便を柔らかくする薬や腸を動かす薬も使用し、コントロールしましょう。
下痢
下痢は水分量が多い便です。大腸の動きが活発になったり、大腸の水分が増えると下痢になります。原因としてはウイルスや細菌感染などの感染症で増加しますし、薬剤性や内分泌異常、乳糖不耐症などの吸収不良、慢性膵炎などの脂肪便、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群でも下痢が起きます。炎症性腸疾患や感染性腸炎では腹痛や血便を合併することもあります。
便失禁
肛門括約筋の機能が低下し、排便がうまくいかないことです。治療は手術と保存的な治療があります。保存的な治療としては薬の内服や肛門の周囲の筋肉をしめる運動をおこなうことで改善することがあります。ウォシュレットの使い過ぎで肛門機能や感覚の低下で失禁していた人が、ウォシュレットをやめて失禁がなくなった方もいました。
注意が必要な便
血便、細くて長い便、腹痛・水様便・腹部膨満を伴う場合は大腸癌の可能性があり、診断のために大腸カメラが必要です。
むくみ
浮腫の原因は心臓、腎臓、肝臓、内分泌、薬剤、栄養障害、静脈還流、感染、炎症、血栓、アレルギー、リンパ妊娠、特発性(原因不明の中年女性発症)、廃用性(高齢による筋力低下や動かさないことによる)など多岐にわたります。病態によって異なりますが、左右差のあるタイプや左右差の少ないタイプがあります。圧迫により、へこんだままのタイプとへこまないタイプ(甲状腺異常、リンパ浮腫など)に分かれます。病態により治療がかわります。