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医療豆知識

恵方巻き・のり巻きは何歳から?子供や高齢者の窒息リスクは

はじめに

今年の恵方はどちらか確認されましたか? 家族みんなで同じ方向を向き、太巻きを無言で頬張る光景は、日本の風情ある一コマです。しかし、恵方巻きにおける窒息の明確なエビデンスはありませんが、恵方巻きの形態やルールは今までの報告よりリスクがあると考えられます。特に嚥下機能(飲み込む力)の低下した高齢者や嚥下機能が発達しきっていない子供には窒息のリスクがあります。

子供の窒息における搬送

「窒息なんて、めったに起きないでしょう?」 そう思われているかもしれません。

東京消防庁が公表しているデータ(令和2年〜令和6年)を見てみましょう。 このわずか5年間で、窒息や誤飲により救急搬送された5歳以下の子どもは、なんと5,285人にのぼります。

これを単純計算すると、1年で約1,000人。つまり、東京だけで毎日約3人の子どもが、喉に何かを詰まらせて救急車で運ばれていることになります。これは決して稀な事故ではありません。

特に注目すべきは年齢です。 事故のピークは離乳食期の生後9ヶ月頃ですが、実は4歳〜5歳の子どもも全体の13.4%(10人に1人以上)を占めています。もう幼稚園・保育園の年長さんだから大丈夫という油断は禁物です。

そして、その搬送原因の第1位は「食品(24.4%)」です。 おもちゃやコインよりも、毎日の食事が一番のリスクなのです。

高齢者の窒息の搬送数

東京消防庁のパンフレットでは、高齢者は令和5年には、1644人搬送され3割が死亡リスクの高い重症以上でした。包み・袋や食品など様々なものが原因となっています。食品では、3位おかゆ、4位肉、6位もち、8位ごはん、9位パン、10位菓子と食品を多く含みます。恵方巻や海苔巻きは8位に含まれます。

餅については以前ブログで紹介していますのでこちらを参照ください。

医学的に見る「危険な食べ物」の特徴

では、どんな食べ物が危険なのでしょうか。 2023年に発表された、窒息のリスク因子に関する論文(Eur J Transl Myol)では、世界中の窒息事故を分析し、危険な食品の物理的な特徴を報告しています。

この論文で挙げられているハイリスクな特徴は以下の通りです。

  1. 円筒形・輪切りのもの(気道の形にスポットはまりやすい:ホットドッグ、ソーセージなど)

  2. 粘着性のあるもの(喉に張り付く:餅、パンなど)

  3. 繊維質のもの(噛み切りにくい:野菜、肉など)

  4. 圧縮できるもの(口の中で押し固められる:パン、ケーキなど)

さて、ここで恵方巻きを見てみましょう。

  • 形は「円筒形」です。

  • 海苔は丈夫な「繊維質」です。湿った海苔の繊維は強靭です。咀嚼力が発達していないと断ち切れず、長い帯状のまま喉へ送り込まれます。

  • 海苔とご飯は唾液で「粘着性」を持ちます。上あごに張り付いた経験はないでしょうか。また、海苔はご飯という粘りのある塊を包み込んでいます。 噛み切れなかった海苔が、飲み込めなかったご飯を袋状にまとめ上げ、海苔でパッキングされた大きな塊として喉を塞いでしまう可能性があります。

  • 恵方巻は急いで押し込むと「圧縮」されてます。

つまり、恵方巻きは、国際的な医学基準で見ても「窒息しやすい条件」をいくつも兼ね備えた食品なのです。

子供の窒息リスク

医学的な視点から見ても、5歳未満のお子さんが窒息しやすいのには明確な理由があります。一番の原因は、「噛み砕く力」と「飲み込む機能」がまだ発展途上であることです。 この時期は奥歯が生え揃っていないことも多く、硬い食材を十分にすり潰すことができません。

大人は無意識に食べ物を細かく砕き、唾液と混ぜて滑らかにしてから飲み込みますが、子どもはこの動作がまだ上手ではありません。そのため、豆やナッツのような硬い食品がそのまま気管に入り込んでしまい、気道を塞いだり、重い肺炎の原因になったりするケースがあります。

高齢者の窒息リスク

窒息の三大リスクとしてよく挙げられるのが、「神経の病気」「飲み込みの障害(嚥下障害)」、そして「歯がない、入れ歯が合わない」といったお口の問題です。 脳梗塞の後遺症がある方はもちろん、噛む力が十分でない方は、お餅などは控えたほうが良いでしょう。他にも肺の病気やアレルギー、飲酒、口の手術歴などもリスクを高めると言われています。高齢者は嚥下機能が低下してきており窒息リスクがあります。

また、日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、認知症や高次脳機能障害などで「次々と口に詰め込む」「噛まずに丸呑みする」といった食べ方の癖(摂食行動の異常)がある場合、どんなに柔らかい食事であっても窒息は起こりうると注意喚起しています。 食事の形を工夫するだけでなく、食べている様子をしっかり見守ることが、事故を防ぐためには欠かせません。

安全な楽しみ方

じゃあ、いつから食べさせていいの? これには個人差がありますが、口腔機能の発達と搬送データを踏まえると、以下のような段階をおすすめします。

乳児は摂取を避けてください。

3歳未満でも食べさせたければ工夫が必要です。生魚は避け、海苔はきざみ海苔にして、具材も柔らかいものにして、カットしてたべるようにしてくでださい。

3~5歳では刻まれているものや、必ず包丁で一口サイズにカットしてください。ブドウなどでも窒息のリスクが高いとされ、4分の1にカットすることが推奨されています。弾力がありすぎるイカやタコ、噛み切りにくい葉物野菜は避け、ツナマヨやひき肉、柔らかく煮た野菜など、お子さんが噛みやすい具材を選びましょう。海苔の代わりに「薄焼き卵」で巻いた「オムライス風恵方巻き」はどうでしょうか。

6歳以上では嚥下機能は発達してきていますが、「早食い」や「ふざけ食べ」のリスクがあります。「一気に食べる」というルールは、安全のために廃止しましょう。「よく噛んで、お茶を飲みながら、ゆっくり食べる」。場合によっては恵方巻きを切ってあげてください。これを大人が手本として見せてあげてください。

高齢者では唾液の低下や嚥下機能の低下より避けた方がいいと思われます。ある程度嚥下機能のある方は、嚥下の状況を見てカットなどで対応してください。 食べる前に、お茶や汁物で口の中を潤して、お箸でゆっくり食べてください。そして、食べている最中もこまめに水分を摂りましょう。

もしもの時のために

もちろん、予防が最善の策ですが、万が一の緊急事態に備えておくことも親の務めです。もし目の前でお子さんが喉を詰まらせてしまったら。日本小児科学会や東京消防庁のウェブサイトでは、実際の対処法を動画で分かりやすく解説しています。いざという時にパニックにならないよう、一度確認しておくことを強くお勧めします。

小児科学会の動画

また、窒息事故は65歳を超えると増加し、80代でピークを迎えます。命を落とす危険性が高いため、高齢者の方も事前の対策が不可欠です。東京消防庁のサイトには、食べる際の注意点や応急手当の方法が詳しく掲載されています。ご自身だけでなく、ご家族とも、ぜひ情報を共有してください。

東京消防庁の動画

緊急時の鉄則

  1. 躊躇せず119番通報を 窒息は一刻を争います。数分で心停止に至る可能性があるため、処置を始めると同時に大声で周囲に助けを求め、誰かに119番通報を頼んでください。

  2. むやみに指を突っ込まない 見えない異物を指で探るのは大変危険です。かえって異物を奥へ押し込み、気道を完全に塞いでしまう恐れがあります。指を入れるのは、異物が口の手前まで出てきており、確実に掴める場合だけに限定してください。

  3. 反応がなくなったら心肺蘇生へ 呼びかけても反応がない、あるいはぐったりして呼吸をしていない場合は、背中を叩くなどの異物除去は中止します。直ちに心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)を開始し、救急隊に引き継ぐまで続けてください。

まとめ

節分は、本来「魔(鬼)を払い、福を招く」ための行事です。 その行事が原因で、窒息や肺炎という「魔」を招き入れてしまっては、何のための節分かわかりません。

医学的な視点で見れば、恵方巻きの「一気に、無言で、丸かぶり」というルールは、人間の体の構造に逆らった、非常にリスクの高い食べ方です。

縁起物なので切りたくないという気持ちもわかりますが、リスクの高い方は避けたほうがいいように思います。

「うちは薄焼き卵で巻いてみたよ」 「おじいちゃんのために、みんなで一口サイズに切って食べたよ」

そんな「家族の身体を思いやった工夫」こそが、本当の意味での「厄除け」であり、最高の「福」ではないでしょうか。

どうか今年の節分は、形にこだわりすぎず、何よりも安全をど真ん中に置いて、笑顔でお過ごしください。


書いた人

石井優

資格
日本内科学会:認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会:専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会:専門医・指導医
日本肝臓学会:専門医
日本腹部救急医学会:認定医
日本膵臓学会:認定指導医
日本胆道学会:認定指導医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修終了
医学博士


いしい医院 内科・消化器内科

総合内科専門医・消化器病学会専門医・消化器内視鏡学会専門医・肝臓学会専門医・リウマチ専門医

住所:〒140-0015 東京都品川区西大井3-6-17
電話番号:03-3771-3933
休診日:水曜、土曜午後、日曜、祝日

時間
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12:30

16:00 ~

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